第1章 魔界
「疲れたでしょう?ご入浴を済ませてから、ゆっくりおやすみなさいませ」
と、ミアーシェがバスタオルとネグリジェをどこから持ってきたのやら、手渡ししてくれる。
「あ、ありがとう……」
ミアーシェがそのまま私の前を行き、部屋の中に設置されたお風呂場に連れて行ってくれる。魔界にもお風呂はあるんだ………。
「魔界にだって、お風呂はあります。基本、人間界とはさして変わりませんので」
「え……っ?あ………そ、そう……」
私、また声に出していたかな……。
私は動揺を隠しきれていない声でそう答える。
「それでは、中で湯船の湯加減を見てきますので、いま召されているドレスを脱いで、置いておいてください」
「え………、えっ!?」
だって私………女だよ?
こんなだけど、女だよ?
ミアーシェって………男だよね??
「ルシファム様に、貴女様のお世話をするように、と仰せつかっております。それでは、早くお脱ぎになって、中へお入り下さい」
それだけ言って、風呂場の中へと入っていく。ここは従った方がいいのだろうか………。私は、胸元強調どセクシードレスを身につけた自分の体を見下ろす。
うん………。
見ても得することなし、見られても損することもなし!潔く、諦めよう。
ただせめて…………、
バスタオルだけでも………。
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「王女様、お待ちしておりました」
ミアーシェが私からバスタオルを剥ぎ取ろうとする。私は必死の力で抵抗した。
「いやいやいやっ!私、ひとりでお風呂に入れるからっ!」
私が想像していた以上に恥ずかしかったのだ。
「我慢してください。特に今日はお疲れでしょう?」
そ、そうだけど!
それでもなかなか納得してくれない。
「いやぁあああああっ!」
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「はぁああああ………」
洗われて………しまった………。
私の抵抗も虚しく、洗われてしまった。そりゃあ、もう、すっっごく綺麗に。
ミアーシェにはもう部屋を出てしもらって、私は天蓋付きのベッドに、用意してもらったネグリジェとはに合わない、大の字になって寝転がる。
多分、出て行ってはもらったけど、すぐそこに待機しているのだろう。
「ほんと、なんなの……」
朝、目覚めたら、全て夢でした、なんてオチを期待しながら、私の意識はいつの間にか深い闇の中に落ちていった。