第5章 変化
「……兄さんが惚れる理由、分かったかも」
「へ?」
「ボクもキミが好きになっちゃった」
「え?」
頬を赤く染めながら『サーシャが私を……好き……?キャッ、恥ずかし』とかいうリアクションを取れれば私も少しは可愛げがあるのだろうけど、残念ながらそんな乙女なリアクションは持ち合わせていない。
むしろ、今の『え?』は『うそでしょ?本気で言ってんの?』という意味の『え?』だ。決して、照れ隠しでもなんでもない。
「こんな男前で気の強い女の子、初めてかも。しかも、可愛いし……ね、ボクにしなよ」
男前で気の強い………。
そうね、まあ認めるわ。
可愛い………?
街に降りてみなさいよ。モデルのスカウトマン直行の女の子いっぱいいるから。
「ま、それはいつか決めてくれたらいいよ」
冗談なのか本気なのかいまいち掴めない。
「キミはさ、ボクの力を素晴らしいって言ってくれたじゃん?そんなの、初めてだよ。何の役にも立たないって思ってたからさー。でもさ、キミのおかげで前向きになれそうだよ。……ありがとね」
ぼそっと最後に礼をつぶやく。すごく小さな声だったけど、私は聞き逃さなかった。
「どういたしまして」
冗談なのか本気なのか。
よく分からない人だけど、多分、そうすることで今まで自分を守ってきたんだと思う。防戦を張って必死で守ってきた。だからこそ、心の込めた礼をいつもの調子で言えなかった。彼の心は読めないけれど、なんとなく分かった。多分……ううん、絶対にそう。
サーシャはこれから前を向いて進んでいけるだろう。でも…………
「ボクはさキミのおかげで前を向けそうだ。でも……」
私は?