第5章 変化
「私が孤独、か……」
そうなのかもしれない。
サーシャにはそう見えるのだから、私は多分孤独なんだろう。いや、自分でも気づいていた。ただ、認めるのが嫌なだけ。
「そうね……そうなのかも」
「ねえ……ちょっとさ、ボクに付き合ってよ」
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いいからいいから、と無理やり連れてこられたのは城の屋根の上。足を滑らせた時点で私の人生即終了だ。
「よいしょっと」
サーシャが年寄りみたいに掛け声を出しながら不安定な屋根に腰を下ろす。そして、隣をぽんぽんと叩いて私も座るように促す。私が座ったのを確認すると、サーシャがただ黒いだけの空を見上げて話し出した。
「ねえ……キミは兄さんの魔力の強さ、知ってる?」
いきなり何を言い出すのか、と思ったが彼の横顔があまりにも真剣だったから……私はいつものノリで彼に答えることが出来なかった。
「ゼラの魔力……」
そういえば、初めて会った時に驚いた覚えがある。確か、私の招待を隠すために使っていたコンタクトをゼラに魔力で取られて………。そうだ、それでその集中力と器用さに呆気に取られた……気がする。
「……認めたくはないけど、強い。よく分からないけど、元からの才能ってやつじゃない?」
「そう。元からの才能。ボクと兄さんは持ってるものが違うんだよ。それに兄さんは……炎を司るドラゴン一族の長なんだ。つまりさ、キミの元執事と一緒……純血ドラゴン種のうちのひとり」
ふうん、と頷きながらサーシャの横顔を盗み見る。あまりにも悲しそうな顔で言うものだから、胸が痛くなった。
「強い兄さんと違って、ボクは弱い。すごく、弱い。強力な炎の魔力を持つ兄さんに比べ、ボクにあるのは治癒の魔力だけ。炎なんて……」
サーシャがぱちんと指を鳴らすと、ポッと火が指の上に浮かぶ。
「これが限界。どうしてだろうね……。ボク達、兄弟なのにさ」