第5章 変化
「うっわ……」
最悪だ。
焦っていたからってなんでここに入ってきちゃうかなあ……。それならいっそ、兵士たちにこの泣いた後の酷い顔を見られた方がマシだ。
「え、なにそのあからさまに嫌って感じの顔っ」
だって、嫌だもん。
「それで?どうしてボクの部屋に入ってきたのー?あ、もしかして………夜這い?」
言葉を返すのすら馬鹿らしくなってきた私は、冷ややかな視線を送った。それはもう、世間のように冷ややかな視線を。
「ううっ、寒気がする……」
効果あり。
「わかった、わかったってー。だからそんな顔しないしない」
「………ねえ」
「ん?なにかなー?」
ふと、感じたことがある。
不思議な………いや、違和感……。
この部屋はどこか………
「寂しい」
「そっかそっか〜!じゃあボクが慰めてあげ────」
「この部屋は寂しすぎる」
サーシャが私に笑顔を向けたまま時が止まったかのように止まってしまう。だが、その笑顔が崩れる事はなかった。
「この部屋広いもんねー」
違う。そんなんじゃない。
ここから感じるのは寂しいなんて可愛いものじゃない。そう、これは…………孤独。
分かる。
この感じ、すごく分かる。
「あんたも孤独……なの?」
私が孤独なように、彼もまた孤独なのだ。だからこそ、分かるものがある。私たちは似た者同士なのだ。嫌だけど。
「さあ?どうかな」
サーシャはあくまでも平然を装う。だけど、それはあきらかに頼りないものになっていた。
「でもそれはキミもでしょ?」
サーシャの部屋は何もなかった。
あるのはやたら大きなベッドだけ。他は何もない。机も椅子も、何も。壁も床も真っ白。窓の外が黒いだけに、その白は孤立感、孤独感をより大きく感じさせる。だけど、弱い笑みを浮かべながらそう言ったサーシャの方がこの部屋よりずっと孤独に見えた。
軽薄そうなサーシャにどんな闇が隠されているのか。そんなの、分かるはずがない。だけど、これだけは言える。
もう彼は戻られないところまで孤独に溺れてしまっている。