第5章 変化
「ん……」
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。泣いて赤く腫れた目を擦りながら、起き上がる。
ぐうぅぅぅぅ。
そういえば、晩ごはん何も食べていない。私はそっと部屋を出た。多分、今なら見張りの兵士くらいしかいないはずだ。出来れば誰にも見つかりたくない。
「っ……!」
2、3人ほど足音が聞こえてきたから、咄嗟にすぐそこにあった柱に身を隠す。だが、彼らはこちらに向かってきているから、おそらく見つかるだろう。どうしてそこまでして隠れたいのはわからない。多分、弱いところを見られたくないんだ。そんなところを誰かに見られて笑われるのがいやなんだ。
私はすぐそばにあった部屋の扉を開けて、中に入った。
「…………」
見回りの兵たちの足音が通り過ぎるまで息を潜める。あと、もうすぐ………あと…………
「あっれー?王女サマじゃーん」
「〜〜ー………っ!」
誤算だ!まさかこの人がいたとは……!
久しぶりに登場、サーシャだ。
私はジェスチャーで必死に黙ってほしいと伝える。王道の、人差し指を立てて、しーっ。
「え?キスして欲しいの?しょーがないなぁー」
違うわ!
私はサーシャの頭を軽く叩いた。
「うわっ、暴力はんたーい」
あーもう、どうしよう!
兵士たちが『あれ、なんかいるぞ』って言って入ってきたら!
「だいじょーぶ。誰も入ってこないからさ」
「……え?」
「だってここ………」
サーシャがいたずらっぽくにこっと笑う。
「俺の部屋だもん」