第5章 変化
「うそ…………」
魔界では私の能力が無効化されて全く人の心が読めなくなって誰を信じていいか分からなかった時、ルシファムが言ったあの言葉は………嘘だったの?俺を信じろって………俺は嘘をつかないって言ったじゃない!
「嘘じゃねぇよ。魔界は三つに分かれて勢力争いをしていると言っただろ?今、ルシファムの軍は危機的状況にあんだよ。だからこそ、お前を呼び寄せて切り札にしたんだ。それでも嘘だと思うか?だがその証拠に、ルシファムはお前を簡単に俺によこした。なぜか分かんだろ?」
いやだ。聞きたくない。
「その方があいつにとって都合がよかったからだ」
じゃあ……今までずっと?
ずっと私を嘲笑ってきたの……?
この時、私の中で何かが崩壊する音が聞こえた。多分、まだどこかでルシファムのことを信じていたのだ。彼は私を見捨てていない。いつか助けに来てくれる、と。
そんなの、あるはずがないのに。
「話はそれだけ?」
「え………?あ、ああ」
私は踵を返してゼラの部屋を出た。
やはりさやかは俺にこそふさわしい。
そんな声が聞こえた気がした。
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疲れたなぁ……。
もう、疲れた。
部屋に入り、ベッドに座った瞬間に張り詰めていた糸が切れ、目の前が霞んでいく。俯くと、ぽたぽたと膝の上に置いた手の甲に水が落ちる。この水を、私は知っている。涙だ。
「泣くほどに……私は彼らを信じていたのかな……」
いつの間にこんなにも情が湧いたのだろう。こんなもの、いらないのに。
「さやか様……」
「ねえシィラ。少し、ひとりにしてくれない?」
こんな弱いところ、誰にも見られたくない。こんな脆いだなんて知られたくない。
シィラは無言で頭を下げ、部屋を出て行った。これが彼の優しさなのだ。
私は目を覆い、そのまま後ろに倒れ込む。そしていつしか、深い眠りへと落ちていった。