第5章 変化
「ああ、そうだったな」
忘れてたのか。
「なあ、お前は………どうしてルシファムのやつがお前をこの俺によこしたと思う?」
「………」
いきなり、なに?
こんな質問………。
「私が捨てられたことに変わりはないのだから、今更別に………」
そう、チェスの駒のようにあっさりと切り捨てられたのだ。私は所詮、その程度の存在だった。ただそれだけのこと。
「本当にか?本当に気にならねぇのか?お前はあいつらが好きなんじゃねぇのか?」
「しつこい。……気にならないと言えば嘘になる。だけど………」
だけど、怖いじゃない。
本当のこと知って、傷付くのはもう嫌なの。
「なら、お前はなぜだと思う?」
「なぜ………」
捨てられたことに理由があるというの?ゼラはその理由を知ってるの?
「くくっ……口では気にならねぇとは言っても、顔は正直だな」
何がおかしいのか、ゼラが喉を鳴らしながら笑う。
確かに、気になる。
でも、怖いんだ………。
「なあ、おかしいと思わねぇか?」
「……なにが」
全てだよ、とゼラがにやりと口角を上げる。
自分が傷つくだけだ。怖い。聞きたくない。でも、皮肉な事に好奇心が勝ってしまう。
やめろ。警笛が鳴り響く。
でも、聞かずにはいられない。
「まず、人間界で過ごしてきたお前をなぜわざわざ連れ戻した?こっちに来なければ、お前は自分が魔族であることを知ることなく生きることが出来たのに。人間として、その僅かな生をまっとうすることが出来た。違うか?」
私に同意を求めておきながら、隙を開けずに言葉を続ける。
「お前が前魔王の妹の娘だから?んなの関係ねぇよ。実際、ミーネは魔界とは完全に縁を切ってんだ」
じゃあどうして………。
私がそれを口にする前にゼラがその答えを口にする。
「お前は利用されてたんだよ」
「え────………?」