第5章 変化
【ルシファムside】
「ルシファム様っ!城下で開催される式典に出席しなければならないんですよ!?」
「ああ、分かってる……」
「でしたら、なぜまだ寝間着姿のままなのですか!もう民は集まり、ルシファム様を待っております!」
「ああ、そうだな……」
「ど、どこに行かれるのですか!?」
「皆の元に……」
「先に身支度を………って、ルシファム様!待ってください!!」
だめだな……。
ここ最近、何もする気になれない。何にも手をつけられない。
「そんなにさやか様が恋しいのなら、なぜゼラ様方の元に行くように、と指示されたのですか」
今のミアーシェの聞き方は、質問というよりは責めている感じだ。あいつをゼラの元へと行かせたことについて、俺を責めている。当たり前のことだ。
「言えない」
そんなこと、言えるわけがない。
だって、俺はあいつを……………。
「では、私がさやか様を迎えに行きます」
胸がずきんと痛んだ。
「っ………」
「ルシファム様、私はさやか様が好きです。主従関係としてではなく、一人の女性として好きなのです。許されぬことなのはわかっています。だから、この想いをさやか様に伝えようなんて思っておりません。ただ………、好きなひとが今悲しんでいるのかもしれないというのに、じっとしていられないんです」
ミアーシェがさやかを……?
いや、本当は気づいていたはずだ。
ミアーシェはあいつが好きだって………。
「そうかよ。俺には関係ないな」
「なら、なぜ苛立っておられるのですか?」
「苛立ってなんか────」
「苛立つとそうやって頭を掻く癖、まだ治りませんね」
「ちが────」
「図星をさされると、耳がぴくりと動く癖も」
やっぱり、ミアーシェには敵わない。
目の前でミアーシェが、何百年使えたと思っているのですか、と微笑む。
「ルシファム様。私はさやか様の元へ行きます。貴方様はどうされますか?」
そんなの、決まってる。
俺がどんな理由であいつに近づいたとしても、この想いは変わらない。変わるわけがないんだ。
「行くに決まってる。夜明けに向かうとするか」
まずは式典に出ないと……。
あ、その前に。
「俺、さやかのこと好きだから」
知ってました、とミアーシェがまた微笑んだ。