第5章 変化
「そ、そうだ!ユーリちゃん、このお菓子を持ってお庭に行かない?ぱぱも連れて」
私の提案にユーリちゃんが目を輝かせた。
「ぴくにっく!」
「そうそう、ピクニック!」
お仕事に無理やり行かされ、部屋の隅で待機しているぱぱことシィラを連れて庭に出た。
「ラ・ルイーゼはないのね」
「ら……るい、ぜ?」
「うん、そうだよ。すごく綺麗なお花なの」
結構気に入っていたのだけれど。
というか。
「なに、この不気味な花」
『ウォウ!ウ、ウウウ』という、不気味な声を出す花。っていうか花に声とかあるの?
「それはツンデレ、という花です」
「ツンデレ?」
ツンデレってあれだよね?
普段ツンツンしてる子が時々デレるっていうあのツンデレ。一時期流行ったからねぇ。
それで?
そのツンデレがなんだって?
「ええ、その花の名前です」
深い緑の花を咲かせるお世辞にも綺麗とは言えない花。しかも、なんか顔がついてるし。近づいてみると、閉じていた花がぱかりと開き、花びらに隠された口が丸見えになる。どうやら威嚇されているみたいだ。
「ちょっとこれ、抜いてみてもいい?」
少し興味が湧いたのだ。
「ええ、もちろんでございます」
持ちたくはなかったけど、彼のウエスト(花の茎の部分)を握って土から引っこ抜く。
『イヤァーーーーン』
「は?」
あまりにも気持ちの悪い声を上げるから、私は思わず手を離した。彼(花)は体をくねくねと曲げてなぜか恥ずかしそうにもじもじする。そして、花弁の外側に付いていた目は何も無い宙をさまよっている。さっきまで、あんなに私を睨んできたのに。しかも、顔(花の部分)にほんのりと朱がさしている。
「うわ………ほんとにツンデレ……」