第5章 変化
「何して遊ぼっか」
「えっとね、ユーリね、おままごとしたいのっ」
ふぁあああっ!
癒されるぅうう!
「そっかそっかぁ!おままごとね。ユーリちゃんは何役をしたい?」
ベッドの上にちょこんと座り、楽しそうにそのままぴょんぴょん跳ねる。
「ユーリはねっ、おねいちゃん役するのっ」
お姉ちゃんが言えなくて、おねいちゃん、って言うところにすごく愛らしさを感じるっ!あー、今ならロリコンさん方の気持ちが分かる。わかるよっ!
「だから、おねいちゃんはね、まま役するの!父様はね、ぱぱ役するのっ」
「私もですか!?」
嫌な素振りを見せるシィラを横目でじとーっと見つめる。いや、睨む。こんな可愛い子の言うことさえも聞けないの?という想いを込めて。
「分かりました。ぱぱ役、ですね」
顔は思いっきり嫌そうだけど、とりあえずは良しとする。
「それじゃあね、ぱぱはお仕事行ってきてっ」
「え?」
「お仕事に行くのっ」
シィラ、子供に負ける。
それを見た私、密かに嘲笑う。
「いってらっしゃい、あ・な・た♡」
「………いってきます」
え、すんごい嫌な目で見られたんだけど。
「ままー、お腹空いたのーっ」
「そうなの?じゃあ、何か食べよっか」
テーブルの上に置いてあるお菓子を食べるため、一度ユーリちゃんを抱き抱えてベッドから下ろす。すると、ユーリちゃんが私の手をぎゅっと握る。
「ままの手、冷たいの」
「………ユーリちゃんの手は温かいね」
人の温もりなんて随分と感じていなかったからかな。もう、冷えきっちゃってるんだ。
『気持ち悪いんだよっ、妖怪女!』
「っ…………!」
肩がびくりと揺れ、ユーリちゃんの手を解いてしまう。何事か、とユーリちゃんが不安げに私を見つめた。こんな小さな子にこんな顔させるなんて、だめな大人だな。
でも、私はもう一度ユーリちゃんの手を握ることが出来なかった。