第5章 変化
ゼラの城に連れてこられてた翌日。
朝食は私の部屋に運ばれてきた。食べたら俺の部屋まで来い、とゼラからの伝言付きで。
「おお、さやか。やっと来たか」
それほど待たせたつもりはないのだけど。
「お前に執事をつける。ルシファムんとこよりよっぽど優秀なやつだから安心しろ」
何を?
何を安心するの。
「シィラだ」
ゼラの隣に立っているいかにも賢者っぽい人がシィラ、という優秀な執事らしい。銀髪に深い灰色の目。そしてやっぱり、整った顔。切れ長の目は彼のクールな雰囲気を余計に引き立たせた。
「なんか用があったらこいつに言えよ」
「はあ………それだけ?」
文句あるか、と私を見つめ返すゼラ。
文句あるかも何も、こんなこといちいち呼び出さなくてもいいじゃない。私は本音をぐっと抑えて、笑顔を作った。それはもう、perfectな笑顔を。
「よろしく、シィラ」
「よろしくお願い致します、夫人様」
…………?
夫人様?
唖然とする私を放ってゼラがシィラを、よせやい、照れるじゃん、とでも言うように腕でつつく。
「ま、まだ気がはえーよ」
顔真っ赤だし。
っていうか、気が早いも何もそんな気、さらさらないっての。
「と、とにかくそういうことだから!」
は?なにが?
私が聞き返すよりも早く、ゼラが私とシィラを部屋から追い出した。
「夫人様、お部屋に戻られますか?」
「それ止めて」
私はシィラの言葉を遮るくらいの食いつきっぷりで止めるように言った。
「なぜです?いずれ、貴女様はゼラ様の奥様になられるのでしょう?」
様、が多い!
というか、なるわけがない。
あまりに驚きすぎて、声が喉につっかえた。代わりに首を左右に振る。
「ほんと、止めて。普通に名前で呼んでくれない?」
「かしこまりました」
この頭でっかちが!と言いたくなったが、ぐっと押しこらえる。いかにも理系大好きです的な見た目をしている彼と上手くやっていけるのだろうか。
いや、無理だ。
そんなの、想像すらできない。