第5章 変化
丸一日馬車を走らせて、ようやく目的地に着く。馬車ってほんと、不便。道は整備されてないから揺れるし、その振動が直に伝わってきて腰が痛くなるし。腰を押さえて左右に振ると、コキコキっと骨が鳴る。
「早く行くぞ」
せっかちなゼラはもうすでに門の中に入っていた。私は文句を言いながら後について行く。
ゼラとサーシャの城はルシファムの城とよく似ていた。外観だけではない。中もかなり似ている。それを感想として述べると、ゼラに睨まれた。同じにするな、と。なんでも、ゼラにはゼラのこだわりがあるらしい。全く分からないけど。
「お前の部屋はここだ。好きに使え」
天蓋付きのベッドも、きらびやかな装飾が施されたテーブルもドレッサーも、見飽きた。ただ華やかで豪華なだけで、冷たい。そこに温かさはない。
「………お前さ」
案内された部屋から出ようとしたゼラがふと足を止めた。
「なんで文句の一つも言わねぇんだ?どう考えても理不尽すぎんだろ。戻りてぇとか思わねぇの?」
…………。
「あんたがそれ言う?あんたが私をここに連れてきたんじゃない」
「それはそうだが………あっさりと受け止めすぎじゃねぇか?ルシファムの城で俺の城に来いって言った時、お前走ってどっか行っただろ?だけどそれっきりで、なんの抵抗もしねぇ。何があったんだ?」
「何も無いに決まってるじゃない」
「お前は何を隠してる?」
…………。
「隠してない」
「何を騙してる?」
「騙してない」
「お前は────」
「うるさいっ!!!」
ゼラが息を呑む声が聞こえた。
「………ちょっと、一人にしてくれない?」
私の言葉にゼラは何か言おうと口を開き、そのまま閉じる。そして、何も言わず出ていった。