第5章 変化
私はミアーシェとリアムに見送られ、ゼラとサーシャの城に連れていかれた。リアムはぼろぼろと涙を流し、ミアーシェは泣きそうな怒っているような複雑な顔をしていた。そこにルシファムはいなかった。
豪華な馬車に乗り込み、ゼラと向かい合って座る。サーシャは私の隣だ。
「意外とあっさりついてくるんだな」
「まあね」
私は窓の外を眺めながら、素っ気なく答える。
「お前は魔界の現状について知ってんのか?」
魔界の現状……?
ルシファムからは魔界について少し教えて貰っただけだ。無理に詰め込みすぎると混乱するから、と。
「知らない」
そう答えると、ゼラがにやりと口角を上げた。だったら教えてやるよ、と。
「この魔界は今、三つの勢力に別れている。一つ目はルシファム率いる『トランシア軍』。二つ目はこの俺が率いる『ミトランシェ軍』。そして、三つ目はアトラ率いる『ティムシエル軍』」
「ちょっとタンマ。魔界って魔王であるルシファムが治めているんでしょ?なんで三つもなんたら軍っていうのが出来てんの?」
答えてくれたのはサーシャだった。
「確かにルシファムが治めているんだけどー、ま、さすがに魔界全体にはあの人の勢力は行き渡らない。あんなお城一つで遠くの方をまとめられる訳ないじゃん?しかも、ボクたちは前魔王の息子。代々の魔王の一族は魔界での自由を許される。つまり、ボクたちはやりたい放題っ!さいっこうじゃん?」
でもそうなると、世の中好き放題できる人が増えてしまう。自分の先祖が魔王だったっていうだけで好き放題できるなら、この国にはその子孫たちが溢れかえってしまう。
「あ、ちなみにー、魔族ってちょー長生きだから、なかなか魔王は交代しないよー?そーだなぁ、ルシファムが確か、3代目くらいかな。年齢は………220くらい?」
あー、どうしよ。
またまた頭の中がフリーズなうー。
「はあ!?あいつ、まだ220!?」
まだ!?
まだって言った!?
「うん、多分ね。兄さんより50歳くらい年下だよ。ま、ボクよりは30くらい年上だけどね」
兄弟の年齢差が80!?
え、なにそれ!?
私はその会話に入ることが出来ず、次元の飛んだ会話を第三者として聞いているだけだった。