第4章 来客
「王女様!具合が悪そうだとリアム様から聞いております!お部屋で安静になさってください!」
私が庭で休んでいると、ミアーシェが走って私の元へと寄ってきた。
「大丈夫。大袈裟すぎだよ。初めて町に出たから疲れちゃっただけ」
私の言葉にミアーシェがはっとしたような表情を浮かべる。
「そういえばルシファム様が探しておられました。王女様が城下に行くことを承認されたことを完全に忘れられておりまして」
意外とルシファムも抜けている所があるのね。
「リアム様によりますと、ゼラ様に連れられて帰ってこられたとか」
「ちょっと色々あってね」
私はそれまでの経緯を思い出しながら溜息をつく。そんな私を見て、ミアーシェがより一層心配そうに焦り出す。
「やっぱりまだお疲れなのですか!?魔界に来られてから一ヶ月以上は経ったというものの、私は心配で心配でなりません………!さやか様、無理をされていませんか?あ…………」
ほんと、心配症ね。
私は大丈夫なのに。
さっきまでの私なら笑って返せたのだろうけど、今の私は違う。その言葉の裏を考えてしまう。今の言葉の裏にはどんな意味が隠されているのか。何を思って私に話しかけたのか。そんな私の汚い心が私を蝕んでいく。
「すみませんっ、お名前で呼んでしまって………」
あ、そういえば『さやか様』って呼ばれた気がする。別に気にしてないのに。
「いいよ、別に。その方が楽でいいかも。元々、王女様とか柄じゃないし」
どんどん気が重たくなってくる。
さっきまでの私、どうやって話してたっけ?
一度意識しちゃうと、こんなにも思考が変わってしまう。さっきまでの何も考えずに楽しかった時間に戻りたい。
だけどもう、戻れない。
戻ってはならない。