第4章 来客
私は部屋に入るなり、その場に崩れるように座り込んだ。体の力が抜けていくのが分かる。
私の魔力は異性の精を吸い取ることで満たされるらしい。魔力がないと確かにだるくなるのだが、今はそれじゃない。ルシファムと初めてした時以来、一度も気だるくなったことはないのだ。
言いようのない倦怠感が私を襲う。それも、私の体を、ではない。精神的にしんどいのだ。
引きこもりだった生活ががらりと変わったから?
違う。
そうじゃない。
もう、疲れたんだ。
人と関わるのがしんどい。
今日は初めて笑った。
私の記憶では笑ったことは一度もない。
たくさん人と話して、遊んで。
楽しい。とても楽しい。
でも一つ、忘れてない?
ここでは相手の考えていることなんて全く分からない。人間界とは全く違う。あの頃は相手の考えていることが手に取るように分かったから、相手に踏み込むことをしなかった。誰かと関わろうとしなかった。だけど、ここは違う。みんながみんな、自分の思っていることを隠しているのだ。
それじゃあ、相手が何を考えているのか分からない。私と話しながら、根暗とか気味悪いとか思っているかもしれない。いや、絶対に思ってる。
『こっち来んな、妖怪女!気味悪いんだよ!』
「っ…………!」
あれ…………?
おかしいなぁ…………。
とっくに割り切れているって思ってたのに。人なんて大嫌いだって思ってるのに。
まだ引きずってる。
「全ての視線をスルーしろ。外部のことなんて気にするな。あんな人達に好かれる必要なんてない。私は私」
そう、私は私。
他人は他人。
関係を持つだけ、裏切りが待っている。
そのことを私が一番分かってるじゃない。
「深入りするな、されるな。壁を作れ。隙間なんて何一つない完璧な壁を」