第4章 来客
「決めた。お前も城に連れていく」
「は?何決めて………」
というか、今私はあそこに住んでるし。いやでもこれはバレたらまずいかも。出来れば、この人と私がいとこという立場にいることを知られたくない。
「嫌に決まってるじゃない。私は私の家に帰るの」
きっと睨むが効果なし。
「その顔もなかなかそそる。いいぜ、俺はそういうの嫌いじゃねえ」
「はあ?」
ほんと、どうしたものか。
世界中の医者を集めても、この頭のおかしさは治らないだろう。私は預言者でも名医でもないけど、そう宣言できる。確信を持てる。
「暴れんじゃねえぞ」
そう言って、ゼラが私を担ぐ。
「暴れんなって言われて暴れないバカがいるわけないじゃない!離して!このっ」
どれだけじたばた暴れても、彼はなにも動じない。この馬鹿力!と叫ぶも、ゼラは笑うだけだ。頭に生えてるその無駄に大きい角をへし折ってやろうか、と思ったけど、さすがにそこまで私とて鬼じゃない。
こうなったら無駄な抵抗は止めて、城のみんなにも協力してもらってゼラに私の正体がバレないようにしよう。私はぐっと拳を握った。
だが…………
現実はそう甘くなかった。
ゼラに担がれたまま城の中に入ると、一番に出迎えてくれたのはリアムだった。
「おう、ルシファムの弟くんじゃねえか」
ゼラの姿を見るなり、げっと顔をしかめるリアムにゼラがからかうようにして声をかけた。そして、担がれた私を見て、リアムがあっと驚いたような顔をする。
待って!言わないで!
と、口をぱくぱく動かし、ジェスチャーで伝えるも、リアムには伝わらず、私は恥をかくだけで終わった。
「どうしてゼラがさやかといるの!」
珍しくも怒るように叫んだリアムがゼラを睨む。
「さやか?こいつの名前か?お前ら知り合いなのか?………ん?その名前………どっかで………」
ピンチピンチ!
私はすぐに弁解しようとするが、純粋で素直すぎるリアムがそれを邪魔する。
「さやかに触るな!さやかは兄様以外で唯一黒い髪と黒い瞳を持つ、この国の王女なんだから!」
リアム………。
とても簡単でわかりやすい説明をどうもありがとう………。
私の心境を表すかのように、頭につけていたブラウンのウィッグがぽろりと取れた。