第4章 来客
「分かった。前魔王の息子、ゼラね。…………はあ」
「おい、なんだ今のため息は!俺を誰だと思ってやがる!」
はい、出た。
『俺様を誰だと思ってる』発言。まさかリアルに聞けるとは思っていなかった。こんなの、アニメとかマンガの世界でしかありえないと思っていたもの。まったく、予想通りの発言をしてくれる。
「前魔王の息子、ゼラ。さっき何度も名乗っていたじゃない」
ま、何度も言わせたのは私だけど。
「それで、なに?」
「は………?」
私の言葉にゼラが唖然とした表情で私を見る。
「だから、何ってば。あんたが前魔王の息子であることは分かった。それで?」
私は現魔王にタメ口をはたらいているような女だ。今更、前魔王の息子なんかに言葉遣いを改めるわけがない。それなら私は現王女だ。
「今まで俺に逆らうやつなんていなかったのに………」
こーゆーの、自意識過剰っていうの。
自己中心的っていうの。
俺様主義者だっていうの。
ま、この坊ちゃんには分からないか。
無礼を働いた私は、そうね………処刑、といった所か。
と思っていたのだが、どうやらこの坊ちゃんは思考が斜め上を行き過ぎているようだ。
「いい!いいぞ!気に入った!」
え…………まじですかい。
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【ルシファムside】
「おい、ミアーシェ!あいつはどこに行った!」
俺は廊下ですれ違いざまにミアーシェに声をかける。今のこの忙しい時に限ってあいつが迷子、とかかなり危機的状況だ。
「あいつ………?王女様のことでしょうか?」
「ああ、そうだ!あいつはどこに行った!?」
ミアーシェが少し考えるような仕草を見せる。その時間さえ惜しい。
「確か、城下の方に行かれたと思います。陛下が許可をおろされたのではないのですか?」
「はあ!?城下!?……………がぁっ!」
そうだ………。
俺が…………許可を………。
「うがぁああああ!」
この雄叫びは城中に響き渡り、後の歴史書に『陛下、ご乱心』と記されることになるのだが、それはまだ先の話。