第4章 来客
…………と覚悟をしていたにも関わらず、ルシファムの返事はあまりにもあっさりとしていた。
「え、いいの?」
確かに承諾を得たかったのは事実だが、こんなにもあっさりと許可されても逆に戸惑う。思わず聞き返した私に、ルシファムが訝しげな表情を向けた。
「行きたいんだろ?」
ええ、そりゃあもう当然ですとも。
私は大きく頷く。
「だが、頭を隠しておけ。あとは目の色も変えておけ」
手に持つ資料か何かを見ながらそう言うなり、どうしてかと私が聞く前に部屋を追い出された。忙しい、だって。
んー………、ミアーシェに聞きに行こう。
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「確かクローゼットにコートがあるはずです。城下は裕福な民が多いため、おそらく王女様が浮いてしまわれることもないでしょう…………あ、すみません、ワインの在庫はどのくらい………ああ、十分ですね。分かりました。あとは…………」
忙しく城の廊下を行き来するミアーシェを追って話を聞いていたが、途中で諦めた。ルシファムと同様でとても忙しそうだから。
私はとぼとぼと自室へと向かう。こんな私を見かけても、メイドさん達は慌ただしい足を止めてにこりと微笑みかけるだけだった。
一体全体、何があるというのだろうか。今日は魔界が誕生した日、みたいな?国立記念日、みたいな?あ、でも国っていうよりは……魔立記念日?まあ、なんでもいい。
それにしてもルシファムもミアーシェもひどい。私に教えてくれないなんて、まるで仲間はずれじゃない。引きこもりは大人しく引きこもっとけって?あんまりよ。