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魔界はーれむ。【R-18】

第3章 白い皇子


結構無理やり連れてきちゃったから、嫌がっているのかなと思っていたけど、帰りたそうな仕草は見せてこない。私はとりあえず、紅茶を出した。

「あ、あ……ありがとう、ございます」

「いえいえ」

どこから聞けばいいのだろうか。
この紅茶は彼を落ち着かせるためのものであり、私の考えをまとめるための時間稼ぎでもある。

「………ねえ、顔を見せて」

彼が紅茶を飲む手を止める。それでも私は続けた。

「私はリアムの顔を見たいの」

リアムが両手を膝の上に置き、じっと固まる。どうして彼はこんなにも自分が嫌いなのだろうか。と、そこまで考えて私の動きもぴたりと止まる。

私も私が嫌いだ。
なのに、どうして彼が責められようものか。

「ぼ、ぼぼ、僕はっ…………し、白いから………!顔も、髪も……白いから」

「どうして白いとだめなの?」

私には白いことの悪さがわからない。とても綺麗だったと思う。彼の肌も髪も。

「ま、魔界は………黒が好まれる、から」

その言葉にはっとする。
確かに私も、この黒髪と黒い目だと褒められた。しかも、ルシファムもこの魔界で私を除いて唯一の黒髪、黒瞳の持ち主だと言っていた。

「でも、黒くなかったらだめだってこともないでしょう?だって、黒い人なんて私とルシファム以外にいないじゃない」

私の言葉にリアムが顔を上げた。その拍子に彼の目がちらりと見える。初めてあった時と一緒。光り輝いて見える。

「しっ、しし、白は黒とは真反対の色ですっ………!そんな色が好かれるわけがないでしょう!?」

「だから、ずっとこうして身を潜めてきたの?」

彼がこくりと頷く。
なんて………なんて寂しい人なのだろう。白かったらだめだ、なんて誰もいうはずがないのに。

白が嫌いな魔界人がこの魔界の象徴である城の庭に、ラ・ルイーゼをあんなにも植えるだろうか。あんなにも白く輝いた魔界に映えるあの花を、邪魔だという人がいるだろうか。むしろ、あれは好まれているのではないだろうか。確かに魔界の人々が黒が好きなのは本当だろう。でも、こんな真っ暗な闇の中で黒が引き立つ訳がない。白という真反対の色があるからこそ、引き立つ。そして白も、黒という真反対の色があるからこそ引き立つのだ。

白が嫌いだなんて、誰もいうはずがないのだ。
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