第3章 白い皇子
「ねえ、リアムは何者なの?見た感じ、この城に仕えている人ではないよね?」
彼はこくりと頷く。
でも、何かを言う気配はない。私は更に言葉を続ける。
「昨夜会った時、私がリアムになぜ顔を隠すのか、と聞いたらリアムは白いから、と答えて逃げた。どうして?」
今度はなんの反応もない。
私はまた更に言葉を続ける。
「どうして白いと顔を隠すの?リアムはこの魔界の何?どうして何も答えないの?どうして…………逃げるの?」
彼は逃げてばかりだ。
この黒いフードをかぶった人影。実を言うと、私は何度も見てきている。この城に来てからずっと。さすがに、ちゃんと生きている人だとは思っていなかったけれど。
彼は私から………みんなから逃げている。そして、自分からも。
「あなたなんかに何がわかる!僕は兄様とは真逆の存在………。欠点ばかりの弟だ!出会ったばかりで、しかも、恵まれているあなたなんかに僕の気持ちが分かってたまるか!」
驚きすぎて呼吸をするのも忘れるくらいだった。今までだんまりだった彼が自ら口を開き、怒声を飛ばしたのだ。驚かずにいられるだろうか。
「兄様って誰のこと?」
私は静かに尋ねた。
すると、荒く肩で息をするリアムも落ち着きを取り戻す。
「…………る、ルシファム兄様のこと」
「え?」
ルシファムって弟いたの?
あれでもちゃんとお兄ちゃんなの?
「ぼ、僕と……兄様が全然、に、似てない、って思いましたか?」
どうやら、今の間を少し曲げて捉えてしまったようだ。私はそれを否定する。
「そうじゃない。私はただルシファムに弟がいることに驚いただけ」
でも確かに、似ていないのかもしれない。リアムはすごく内向的で穏やか………どころか挙動不審。それに比べてルシファムは強引で少し俺様主義者。
今の曲がった捉え方からして、彼はルシファムに対して何か欠点を抱いているのだろうか。