第3章 白い皇子
【──side】
あれ………?
あの人………昨日の………。
人目につかないようにして廊下を歩いていると、見知った顔を見かけた。僕は思わず近くの角に身を潜めた。
「あ、ねえ!ラ・ルイーゼみたいな人、知らない?」
ラ・ルイーゼみたいな人………?
白いってこと?そんな人、僕を除いているのだろうか。まあ、彼女が僕を探しているだなんてありえない話だ。
だって彼女は僕が近づいてはいけない存在なのだ。黒い髪に黒い瞳。そして凛とした立ち姿。
こんな僕が近づいてはいけない。
だから、僕は彼女に背を向けて反対方向に歩き出す。
「もう………あの人に会いたいだけなのに」
ぴたりと足が止まる。
もし、その探している人が僕ならば………、彼女は僕に会いたい、と………そういうことだろうか。
「あ、ああ、あの………お、お困り、ですかっ?」
+-+-+-+-+-+-+
私はとりあえず、やっと見つけた彼を部屋に連れ込んだ。彼を椅子に座らせ、私もその向かいの椅子に腰掛ける。かなり強引だけど。
え?鬼?悪魔?私が?
そんなはずがない。確かに無理やり連れ込んだが、むしろ優しい方だと思う。私はなぜかかなりいい待遇を受けている。つまり、この権力をフルに活用して実力行使、という方法もとれるのだ。でも、取らない。こんなの、鬼や悪魔じゃなくてむしろ、天使だ。
「それじゃあ、自己紹介から。私はさやか。あんたは?」
「ぼ、僕は…………リアム………」
フードを深く被り、下を俯く。出会ってからまだ一度も彼の顔を見ていない。
どうしてこんなにも顔を隠すのだろう。だって、別に変な顔でもなんでもない。顔に傷だってなかった。むしろ、妬ましいくらいに綺麗な肌だった。
となると、更に頭が混乱する。
ほんと、彼は何者なのだろうか。