第3章 白い皇子
「ミアーシェ、最近忙しそうね」
昨夜のことがあったから、私は少し棘のある言い方をしてしまった。そして、言ってから後悔した。
「はい、申し訳ありません。ルシファム様のご友人様がご来客になるのですが、その準備に手間取っていまして」
私はあまり聞かない言葉を耳にし、首を傾げる。
「ルシファムって友達いるの?」
「ええ、そうですね………。友人、と言いますか………なんというか」
珍しく歯切れの悪い言葉を返すミアーシェに私は更に首を傾げた。見た感じ、少しやつれた感じもする。
「ミアーシェ、私のことは放っておいてもいいから、少し休んできたら?」
これは本心だ。
ミアーシェにはいつも感謝している。だからこそ、たまにはゆっくりと休んでほしいのだ。私のことなんか気にせずに。
「でも………」
「いいの。私だって立派な大人よ?」
すると、ミアーシェはどこか諦めたように微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは夕食のころまた伺いますので、その時間まで休ませていただきます」
私は頷いてミアーシェに手を振る。
さあて、昨日のラ・ルイーゼを探しに行くか。
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「申し訳ありません。そのような方は存じ上げておりません」
「そう………。ありがとう」
もう何度目かの質問と、もう何度目かの答え。いい加減、違う答えを聞きたい。
私はとりあえず、お城ですれ違う使用人に声を掛けていく。【ラ・ルイーゼみたいな人は知らないか】と。でも、もう何人にも聞いたけど知っている人はいなかった。まあ確かに、そんな突拍子のないことを聞かれても困るだけだろう。
そんな時だった。
「あ、ああ、あの………お、お困り、ですかっ?」
…………………。
「いたぁああああああああ!」