第3章 白い皇子
「あ、蜘蛛」
私は彼のフードを指さして、そう一言だけ呟いた。すると、彼はフードをバサッと取って慌て出す。
「く、蜘蛛っ!?やだやだやだやだ!」
予想以上の慌てっぷりに私は呆気に取られた。ここまでくると、単純というか素直というか…………。
「あ…………」
途中で、彼も罠だと気づいたようだ。どんどん顔が青ざめていく。でも、私はそんなことよりも彼の美しさに目を奪われていた。
端正な顔もそうだが、なんと言ってもその肌の色と髪。雪のように白い肌に、それに負けないくらいの白い髪。一本一本が輝いて見える。そんな彼はまさに………
「ラ・ルイーゼ…………」
「え…………?」
そう。
今日の昼間に見たラ・ルイーゼそのものだった。闇と決して混じらない白さ。彼の目もまた美しい。廊下にある僅かな光の当たり具合によって、金色に光っているように見える。
「み、みみみ、見ないでっ!!」
彼はフードをもう一度乱雑にかぶり直す。こんなにも綺麗なものを隠してしまうなんてもったいない。
「どうして隠してしまうの?」
あまりにももったいなかった為に、つい尋ねてしまう。誰もが羨むような白い肌を持ち、とても綺麗な髪を持っている。それをなぜそんなにも隠してしまうのかが私には分からなかった。
「し、白いからっ!」
と叫ぶように言って、彼が走り去っていった。
え………待ってよ………。
一人になっちゃうじゃん………!
突然現れた天使のような彼は、残酷にも私を放ってどこかへ行ってしまった。
「ラ・ルイーゼ………」
闇の中、白く輝く様子はまさにそれだった。その光景はいつまで経っても頭から消えない。
「あ………名前、聞いてない」