第3章 白い皇子
私は今まで、夜に目が覚めたことがなかった。なのに、今!目を覚ましてしまった。
夜中に目を覚ます、なんて別におかしなことではない。むしろ、今まで目が覚めたことがなかった方がおかし……………くはないけど、そうなのかもしれない。まあつまりは、私がこんなにも驚いて不安に陥ることなんてないのだ。でも、私は今、すごく恐怖の淵に追いやられている。なぜか?そんなの、決まってる。
今日の幽霊事件があったんだよ?
私は今まで、幽霊なんて全然平気だった。私の中で、もうそれは日常に映る景色として認識されていたから。でも、魔界の幽霊っていよいよ本気でやばそうな雰囲気があるじゃない?いや、あるの!
もう、今の私に冷静な判断なんかできる余裕ない。私はベッドから降りて、人を求めて部屋を出た。
でも、廊下は更に怖さを増していた。肌寒い感じが余計にそれっぽい。
「誰かぁ………」
と、らしくもなく蚊の鳴くようなか細い声で人を呼ぶが、こんな声に気づいてくれる人なんているわけがない。
と、思っていた。
「あ、あああああああ、あのっ………」
「ふぁあああっ!?」
あまりにも長い、あ、の連呼に私はみっともない悲鳴を上げた。ここまで挙動不審にされると、怖い。
「ひぃいいっ!」
そして、なぜか声を掛けてきた人が悲鳴を上げる。
「だ、誰かって、ひ、人を呼んでいた、からっ」
「あ…………それで、助けに?」
フードを目深まで被った(声から察するに)少年がこくこくと大きく頷く。脳震盪起こしちゃうんじゃないの、ってくらい。
「ありがとう。でも、あなたが来てくれたからもう大丈夫」
お礼を言いながらも、私の意識は彼のフードの下へといっていた。俯きすぎて顔が見えない。
「ねえ、顔を見せて」
「だ、だだ、だめっ、です!」
それでも私は粘った。
無言で彼を見つめ続けた。それでも彼はなかなか顔を見せてくれない。
でも、私にだって考えがある。