第3章 白い皇子
そんな花の中、何か黒い影が見えた。人の形のようにも見える。まさか…………
「み、みみみ、ミアーシェ!?」
「はい、なんでしょうか?」
動揺しまくりの私とは打って変わって、ミアーシェは随分と落ち着いた様子で花を堪能している。
「あ、ああああああ、あそこっ!!ユーレイ!!!」
「幽霊………?いないじゃないですか」
何言ってんだ、って感じの目で見られる。視力2.0だよ!?自慢だけど!
「ほら!あそこっ!…………って、あれ?」
私が再び指を指した時には、もうその姿はどこにもなかった。
「王女様………。すみません、疲れていらっしゃるというのに連れ回したりなんかしてしまって………」
え?
「いやいやいやいやっ!私は元気だから!すっごく元気!」
腕を曲げて、力こぶ(幻覚)を見せるも、ミアーシェは信じてくれない。それ所か、余計に過保護になる。
「王女様、そろそろお部屋に戻りましょうか。夕食までまだ時間がございます。その間に、ゆっくりとおやすみなさいませ」
違うってばぁあああああっ!
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「幽霊、か…………。くくくっ」
夕食でルシファムにも訴えてみるも、やはり分かってはくれなかった。むしろ笑われた。
「お前、人間界では嫌というほど見てきただろう?それに、俺は悪魔だ。悪魔だって似たようなものだろう?」
なんか、親に諭される子供、みたいな感じの構図が出来上がる。
「うん………まあ、そうだけど………」
確かに言われてみればおかしな話だ。
魔界という、二次元かよ、的な世界に飛ばされた挙句、私は淫魔で悪魔の血が通っている、と言われ、もてなされているのだ。今更幽霊を怖がるっていうのも、おかしいことなのかもしれない。
「今日はもう、ゆっくり休め」