第1章 魔界
ぴちゃん………ぴちゃん……と、水が落ちる少し不気味な音に目を覚ます。
「ん………ここ、は……?」
私は先程までに起こった事の内容を必死に思い出す。
「確か………黒い渦の中に……」
おおかた思い出し、大分落ち着いてきた私は辺りを見回すだけの余裕が出来た。
まず、今の私の状態。
確かに気を失っていたはずなのに、なぜか地面にぺたんと座り込んでいる状態なのだ。気づけば私は地べたに座り込んでいた………なんて、普通じゃない。おかしすぎる。
それにこの服装。
さっきまでは私がこよなく愛する、ジャージ、という便利かつイケてる服を着ていたはずなのに…………、なんなの、これは。ナンセンスなこの………ドレスはっ!!黒を貴重にした……というより、真っ黒で私の体型にぴっちりとフィットしまくってる、胸元強調どセクシードレス。そして、首元に下げたこの宝石を使いまくった、無駄にお金がかかりそうなネックレス。そして、なぜか金で出来た、これまた無駄にお金がかかりそうなハイヒール。
「どんなセンスしてんのっ!?」
思わず、そう本音が漏れてしまうほどに………ダサい。ダサいダサいっ!ダサすぎる!!
私はそんな思考を振り払うために頭を数回勢いよく振る。いやいや、落ち着け。服よりも大事なことがあるはずだ。
そう、問題は私がいるこの場所。
ここはおそらく洞窟。座っている感触で分かる。地面は完全な岩だ。なんでこんな所にいるのか。そんなことより、この洞窟の中の幻想的な世界観に私は圧倒されていた。そんな思考を打ち消すほどに美しかったのだ。
どこにでもあるような岩の表面には、青白く光る石が混ざってあり、暗い洞窟の中をほのかに照らし出す。そして、所々には透明度の高い水晶。私はそんな洞窟の中にただひとり座り込んでいたのだ。
「なんて綺麗なの……」
私がそんな幻想的な洞窟に目を奪われ、うっとりとしていると、そんな背景とは似合わない物騒な声と足音が聞こえてきた。
「△☆!?♪※」
「え、ちょっと!なんなの!?あんた達っ!!離して!」
確かに物騒な声だけど………
何言ってるか分かんないっ!!
鎧に身を包んだ彼らは私を担ぎ、馬車に無理やり放り込んだ。
みるみる洞窟から遠ざかって行く。
意味分かんない……。
まだ現状把握も出来てないのに……っ!
「ばかやろぉぉっ!!」