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魔界はーれむ。【R-18】

第1章 魔界


私は幼い頃から、他の人には見えないもの────つまり、人ではないものが見えていた。

この世にはたくさんの人外が存在している。今、目の前にだってそんなものがありふれている。それは時に、幽霊であり、人の憎しみや怨念といった負の感情でもある。

そして、能力といってもいい、私の視える力のせいで、それはそれは散々な日常だった。人がまとっているオーラが見えた私には、彼らの本音などをすぐさま感じ取ることが出来た。知りたくもない本音を知ってしまった私にはもう、人を信用することが出来なくなってしまったのだ。

そう。

私は人間不信なのだ。

だから、友達なんて出来たことがない。

散々な人生だ。

そしてこれは、死ぬまで続くのであろう。

そのことを疑いもしなかった。

でも、変わったのだ。
私の人生が。
私の日常が。

がらりと、180度変わったのだ。

それは、私が20歳を迎えた4月5日のこと。

誕生日だからといって、特にすることがない私はただひとり、家の近くにある川原に寝転がっていた。

「もう20歳………。ああああ!もう散々っ!」

もうこの際、私の独り言なんて聞かれてもいい。本当に、散々で退屈でつまらないのだ。この世は。

そんな時だった。

目の前に、突如黒い渦が現れた。

「え………なに、これ………」

ほんの2m先にそれはある。
私は手だけを伸ばす。すると、手がその渦の中に吸い込まれそうになる。勢いよく手を引いたけど、私の好奇心は抑えられなかった。

「もし………これが全く違う世界に繋がっているというのなら…………私の人生が大きく変わるはず」

そんなわけないか、と変な妄想を繰り広げた私自身を嘲笑った。でも、どこかでそれを信じている私もいる。

「…………そんなわけ、ない」

それでも私の足は止まらない。その渦にどんどんと近づいていく。

吸い込まれそう。
この暗い暗い闇の中に溶けてしまいそうだ。

そして私はなんの躊躇いもなく、その黒い渦に吸い込まれるようにして中へと入っていった。
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