第2章 初めて
焦って言った私の質問に対し、ルシファムはゆっくりとまた話し出した。
「人間と悪魔との間に子供が生まれるなど、魔界にも人間界にとっても初めてのことだった。だからこそ、お前の存在は未知数だった。だから、お前がまさか、母の血を濃く受け継ぐなど考えてもいなかったのだ」
嫌な予感がする。
私が、どういうこと?と問う前に彼が口を開く。
「お前は俺たちの想像を遥かに上回る魔力を持っているのだ。半悪魔、ではない。ほとんど………いや、お前は悪魔と言ってもいいだろう。そして、それだけではない。お前は魔界でたった一人の………淫魔、なんだ」
人間であることを否定されたこの気持ちはきっと誰にもわからない。だって、今まで、私は人間だろうか、など考えたことがあっただろうか。そんなことを疑ったことがあっただろうか。
「淫魔、とは夢で異性の精を貪るものだが、お前の場合違うようだ。そもそも、その淫魔像は人間が考えたものであって、なにもそれが正しいとは限らない。この魔界に淫魔などいなかったのだから」
「何が言いたいの」
「お前が歓迎されても当然だ、ということだ。黒の瞳に黒の髪。そして、淫魔。なぜお前を追い払う必要があるのだ」
衝撃が大きすぎる。
そんな証拠などどこにもない。それに、私は確かに人間だ。だって現に、私は今まで人間界で生きてきた。
「さっき、体が熱い、と言ったな?それは淫魔としての魔力の副作用、と言ってもいいだろう。お前にも魔力はあるが、人間の血も多少は混ざっている。つまり、その魔力は完全ではないのだ。だから、淫魔として他の者の精を貪り、魔力を調達するのだろう」
「意味………わかんない………」
だって、そんなのおかしい。
「あうっ………!?」
また、だ。
また…………熱が私を襲う。
「さやか………、楽にしてやるから」
ルシファムが私を抱きしめて囁く。その優しさが嬉しい。だが、その優しさは信じてもいいのだろうか。