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十四郎の恋愛白書 1

第15章 No.15


先程の蝦蟇オヤジから飲まされた媚薬はかなり強かったようだ。未だ身体の熱は治らない。
汗を滴らせて耐えるオレを、バックミラー越しにテツが心配そうに見ていた。

やがて真選組御用達の女郎屋へと到着した。

立ち並ぶ女達の中から、黒髪で大きな黒い瞳を持つ女を選ぶ。
部屋の隅に置かれた行灯の弱い光の中、性急に女を抱いた。
高く鳴く遊女の声に、目を瞑って愛しい女を脳裏に浮かべ、欲を吐き出した。







ギィン!ギィン!

怒濤の様な男達の雄叫びの中、彼方此方で刀の交わる音が響く。足元に転がる攘夷志士を踏み越え、オレは次々と向かってくる志士達を薙ぎ倒して行く。

真選組は高杉一派に与する大きな攘夷志士組織に討ち入りしていた。

拠点と思われる郊外の屋敷には、思った以上に大人数の志士達がいた。広い屋敷は混戦の中破壊され、荒れた中庭には、志士達が折り重なるように倒れている。

「原田!奥へ進め!」

共にいた10番隊に指示し、自分は立ち塞がる巨漢の志士と対峙する。
周囲を探ると、地に伏す男達の中にところどころ黒い隊服が見え隠れしていた。

「おおぉーー‼︎」

志士が咆哮を上げながら刀を振り上げ向かってくる。
ギィン!
重たい一撃を受け止めた。ギリギリと鍔迫り合いになる。そして数度の撃ち合いの後、目前の志士を斬り伏せた。

「はぁっ、はぁっ」

切れる息。もう何人の志士を斬ったのか分からない。
返り血を浴びて重たくなった隊服に舌打ちしをしながらも、新たな敵を求めて振り返る。

そこへ女志士がこちら向かって突進してきた。

すかさずその剣を弾き、女の喉元を狙って斬りかかる。
女が恐怖で目を見開いた。
風にたなびくその長い黒髪に、瞬間ゆきが重なった。

「 …っ‼︎」

思わず動きを止めてしまったのだ。

「副長ー‼︎」

山崎の声でハッとするが、一瞬遅かった。
女は懐から短刀を取り出すと、オレの腹に突き立てた。

「 ‼︎ 」

衝撃と共に腹がカッと熱くなり、口からゴボリと大量の血を吐く。

ニヤリと笑った女は次の瞬間に目を見開き、倒れた。総悟が後ろから斬りつけたのだ。

「土方さん!」
「副長!」

総悟と山崎がオレの周囲を囲んで敵と対峙する。

「……!」

言葉が出せなかった。
ガクリと膝を付き短刀が刺さったままの腹を見る。
急所は避けた。しかし身体が動かない。
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