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十四郎の恋愛白書 1

第14章 No.14


小首を傾げて答える総悟の頭をゴツン!と殴る。

「アホか‼︎ んなもん撮ってねぇで、闘え!おまえは何番隊隊長だ!」

総悟は頭を摩りながら唇を尖らせるが、いつも総悟に甘い近藤さんもこれには冷や汗を流しながら深く頷いた。

と、原田が先程から微動だにしない。

「原田?」

視線を向けると原田は手に持った写真集の半分を凝視していた。近藤さんがヒョイと横から覗き、ピシリと固まる。それを見た山崎が反対側から覗き込み、ボッと赤面した。

オレは慌てて3人の手から写真集をもぎ取った。

「……‼︎‼︎」

声にならなかった。

薄暗い廊下で四つん這いになり潤んだ瞳で振り返るオレの姿があった。

後ろから尻を強調するようにローアングルからアップで撮られた写真。たくし上げられた着物の裾からは太腿が覗き、涙目でこちらを見ている。
それはまるで写真越しに誘っているような…。

「トシ、これはアウトだ」
「アウトですね」
「アウトです」
「アウトでさぁ」
「テメェが言うなーー‼︎」

近藤さん達に紛れて尤もらしく言う総悟の頭を思いっ切り叩く。

「総悟‼︎ 説明しろ‼︎ なんだこれは⁉︎ 一体どういう状況だったんだ⁉︎ オレの貞操は無事なのか⁉︎」

総悟の胸倉を掴んで高速でガクガク揺さぶる。

「ちょ、酔う!」

総悟はグルグル目を回して説明どころではない。

「副長!」
「トシ!落ち着け!」

原田に後ろから羽交い締めされてようやく総悟の手を離した。

フーッ、フーッと肩で息をするオレに、総悟は未だグルグル目を回しながら「これは奇跡の一枚なんでさぁ」と話し出した。

「これは、ゆきさんが廊下の床拭きをしてる時にポールペンを転がして、足でポールペンを踏んで滑べって転んで頭を床にぶつけた、その直後オレの気配に気付いて痛みと羞恥に涙目で振り返ったところをシャッターに納めた、という奇跡の一枚なんでさぁ」

長い!
そしてくだらねぇ!

「なんでそれがこんなミラクルな写真になるんだよ‼︎」

オレのツッコミに、総悟はやや胸を張る。
「これはオレの毎晩の努力の結晶なんでさぁ」
「努力?」
「ゆきさんは床拭きをする時、必ず着物の裾を帯に挟んでたくし上げやす。そこでオレはこのアングルの写真を思い付き、毎晩屯所内が寝静まってから、一人廊下でボールペンを転がす練習をしてたんでさぁ」
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