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十四郎の恋愛白書 1

第14章 No.14


オレと総悟も、お互いしか見えていなかった。殺気をぶつけ合い、斬り付け合い、殴り合い…。
お互いの日頃の鬱憤が爆発したかのようだった。
稽古などではなかった。本気だった。



いつしか闘いの場は中庭に及んでいた。

火花を散らしながら幾度も刀を交えた後、遂に最後の渾身の一太刀をお互いに刻もうとした。
その時、

「馬鹿もーーん‼︎‼︎」

屯所中に響く大音量に、ハッと我に返った。

振り返ると、近藤さんが怒りに満ちた表情で立っていた。

「……!」

そして初めて自分と総悟、そして周りの隊士達の状況を知る。

土だらけのオレ達、遠巻きに見る大勢の隊士達。破壊された戸、荒らされた庭、無惨に割れてしまっている、ゆきが植えた鉢植え…。

それらを見遣り、オレと総悟はその場に立ち尽くした。

そこへズンズン近藤さんが歩いてくると、

ゴン! ゴン!

「いだ!」
「いで!」

頭に鉄拳をお見舞いされた。

「馬鹿もん‼︎ 副長と一番隊隊長が、一体何をやっとるんだ‼︎」

稀に見る怒りを見せた近藤さんに流石にやり過ぎたと反省する。

「近藤さん、すまねぇ…」
「すいやせんでさぁ…」

オレと総悟が素直に謝ると、近藤さんは少し表情を緩めた。

「とにかく怪我の手当てをして来い。話はそれから聞こう」

近藤さんがそう言うと、隊士達の中から山崎と原田が進み出てオレと総悟に肩を貸し、医務室へと導いた。




真剣によるかなりの死闘だったが、奇跡的にお互いかすり傷で済んだ。しかし絆創膏だらけだ。
局長室にて、不貞腐れたオレ達二人の前には近藤さんと、何故か原田と山崎。
3人は写真集を目を点にして見ている。

「こ、これはゆきさん、ですよね?」

山崎が割烹着姿のオレの写真を指差した。

「それだけじゃなくて、全部ゆきだ」

未だ残る口の中の血の味に眉を寄せながらオレが答える。

「そうじゃねぇですぜ。ちゃんと土方さん本人の写真もありまさぁ」

総悟は2つに引き千切られた写真集の半分を手に取ると、パラパラと捲り「ほら」とこちらに向けた。最後の方のページにタバコを口に咥えた写真や刀を持つ写真が何枚かあった。

「おい、これはいつ撮ったんだ!」

オレが指差したのは、刀を振り回し攘夷志士を薙ぎ倒す写真。

「ああ、それは3か月前の討ち入りん時かな?」
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