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十四郎の恋愛白書 1

第14章 No.14


いくら真選組の評判が悪いからといって、今までここまで人に見られたことはなかった。

オレ、何かしたか…?

最近、何かニュース沙汰になるような討ち入りなどあっただろうか。



しかしその疑問はすぐ解決した。

マガジンを買いに寄った書店。
店頭の最新刊コーナーに、自分の写真が置いてあったのだ。


「なんじゃ、こりゃーー‼︎‼︎」


手に取ったそれに、ワナワナと震える。

『土方十四郎写真集! 鬼の副長の真実の顔』

そう題名したB4サイズの写真集は、平積みコーナーの三分の一を占領していた。天井からは派手な広告がぶら下がり、写真集の横にはポッププレートまで飾ってある。

オレは写真集を包むシュリンクのビニールをビリッと破り、急いで中を見た。

優しく微笑むオレの表紙を皮切りに、エプロン姿で料理に勤しむオレや、庭の花壇の世話をするオレ、道場で素振りをするオレ、隊士達と談笑するオレなど、計25ページにも及ぶ写真が納められていた。もちろん割烹着姿のもあった。

バッと裏表紙を見る。

発行元 大江戸出版
写真 監修 沖田総悟


っっっっ総悟ぉ〜〜〜‼︎‼︎

怒りのあまりブルブル震える手で、ビリッと写真集を真っ二つに引き裂く。

あんの鬼畜がぁ‼︎ 今すぐ叩っ斬ってやらぁ‼︎

怒髪天を突くとはこのことか。
今の自分ならスーパーサイヤ人にもなれる気がした。

ダッと走り出そうとしたが、しかしそこへ、ガシッと腕を掴まれた。
振り返ると、スーパーサイヤ人を引き留める勇者はオレに向かい手を出した。

「お客さん、お代」






自分の写真集を買うという痴態を晒してしまったオレは、完全に頭に来ていた。

総悟の野郎ぉぉぉ‼︎
今日こそはオレの刀の錆にしてくれるわ‼︎‼︎

抜き身の刀を持ち、総悟の部屋の戸を開け放つ。

「総悟ぉーー‼︎」
「おや、土方さん、おかえりなさい」

寝転んでせんべいをかじる総悟に、益々怒り心頭だ。

「テメェ‼︎ 何なんだ!これは‼︎」

さっき買わされた写真集をバン‼︎と畳に叩き付けた。

しかし総悟はケロリと答えた。

「おや、買ってきたんですかぃ。ちゃんと土方さんの分も出版社から貰ってきてるのに」

その言葉に頭の中でプツンと音がした。

瞬時に間合いを詰め、総悟に切りかかった。


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