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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


息苦しさに思わず薬を飲み込んでしまった。
オレが飲み込むと同時に総悟は鼻をつまんでいた手は離したが、唇は離さなかった。それどころかヌルリと舌を浸入させてきたのだ。

「んんっ」

おい、離せ‼︎ 何やってんだよ‼︎

悟の腕の中で必死で暴れる。しかし総悟は益々力強くオレを抱き締め、口内を弄った。舌を絡め取られ吸い上げられる。唾液が顎を伝い総悟の手がオレの着流しの裾を割って入ってきた。

「 ‼︎ 」

さわりと内腿を撫でられ、ゾワッと鳥肌が立つ。

ガリッ

「痛っ」

舌を噛んでやった。
総悟が唇を離した瞬間腕の力も緩み、オレは思い切り総悟を突き飛ばして離れた。

「はぁっ、はぁっ、総悟っ!テメェ‼︎」

乱れた裾を整え、袖で口の周りをぐいっと拭う。肩を上下させながら睨むオレに総悟はゆっくりと立ち上がるとニヤリと笑った。

「餞別をもらっただけでさぁ」
「はぁ⁉︎ 餞別⁉︎ 」

意味が分からない。
唇を何度もゴシゴシと擦る。
チクショー、感触が取れねぇ。
総悟はそんなオレを見てふと真顔になる。

「土方さん、オレぁ、ゆきさんを諦めやす」
「は⁉︎ 」

いきなり何だ⁉︎
オレは唇を拭う手を止めて総悟を唖然と見た。

「でも、ゆきさんには真選組にいて欲しい。だから土方さん、ゆきさんを手に入れてくだせぇ」
「そ、総悟。どうしたんだ?急に…」

総悟がオレの恋路を応援するなんて、太陽が西から昇ってもありえないはず。

「オレじゃゆきさんを振り向かすことはできねぇ。そう気付いたんでさぁ」

総悟は切なそうに瞳を揺らし、俯いた。

「大事な人を無くすくらいなら、例えあんたに譲ることになっても身近に居て欲しい、そう考えを改めたんでさぁ」

ミツバの事を言っているのだろう。
総悟はぎゅっと拳を握りしめた。

「総悟…」
「だから今回は、今回だけは、悔しいけどあんたがゆきさんを捕まえられるように協力してあげやす」

蜂蜜色の瞳が真っ直ぐ向けられる。どうやら本心らしい。

「総悟…。分かった。必ずゆきの心を射止めてみせる」

オレは総悟の言葉に幾分か感動し、力強く約束した。
総悟も頷く。
いい雰囲気が流れたが、はたと気付く。

「おい、なら、今のキスは何なんだ⁉︎」

憤慨して言うと、総悟はペロリと舌を出した。
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