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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


「土方さんのクソ頑丈な身体と違って、ゆきさんは繊細なんですから、もっと大事に扱ってくだせぇ」

ぐっ、返す言葉もない。
オレは掛け布団を口元まで引っ張りあげた。

「食堂のおばちゃんに雑炊でも作ってもらってきやす。医務室に寄って薬もらってもらってきやすから、大人しく寝ててくだせぇ」

総悟はそう言って部屋から出て行った。
珍しく優しい総悟に、明日は槍が降るのではないだろうかと本気で心配になった。

そういえばゆきと入れ替わってから総悟の襲撃がない。
当たり前か。ゆきの身体を傷付けるわけにはいかねぇもんな。オレの身体のゆきを襲うわけにもいかないだろうし。

…それにしても、熱があると分かった途端、なんで余計にしんどくなるんだろう。
ぼんやりする頭で考えていると、しばらくして総悟が雑炊と薬を盆に乗せて戻って来た。

「ゆきさんには伝えておきやした。後で様子を見に来るそうです。ほら、食いなせぇ」

オレは起き上がり小鍋の乗った盆を受け取った。蓋を開けると湯気が立ち昇り、ふわとろ卵の乗った中身が覗く。

出汁がよくきいていて美味かったが、半分も食べれなかった。

レンゲを置いたオレに、総悟は薬と水を差し出す。

げ、粉薬か。しかも2種類も。

粉薬は苦手だ。あの、いつまでも口に残る苦味が最悪。

なかなか飲まないオレに、総悟はまた呆れ顔だ。

「まだ粉薬が苦手なんですかぃ」

仕方ねーだろ。苦いんだから。

オレが睨むと、総悟は少し黙った後、パッとオレの手から薬を摘まみ取った。
そしてピリッと封を開けると上を向き、自分の口にさらさらと薬を入れるではないか。

「⁉︎ 総悟⁉︎」

呆気に取られるオレの前で、総悟はコップの水も口に含む。

「おい!おまえが薬飲んでどうす… んん⁉︎」

最後まで言えなかった。
総悟がオレの頭を押さえつけ、唇を合わせてきたのだ。

何が起こったんだ⁉︎

頭が真っ白になって、微動だにできないオレの口内に、生暖かい液体が流れ込んで来た。途端に苦味が口いっぱいに広がる。

「 ⁉︎ っん、んんっ」

オレはなんとか唇を離そうと身体をよじるが、総悟に抱き締められ簡単に動きを封じられる。
なかなか飲み込まないオレに、総悟はさらにオレの鼻をつまんできた。

ゴクリ
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