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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


一体どうしたんだ?と続けようとしたが総悟に遮られた。

「髪、濡れてまさぁ。ちゃんと拭かねーと風邪引きやすぜ」

そう言って総悟はオレの横を通り過ぎ、廊下を進んで行った。

肩透かしをくらったオレはその場にしばらく立ち尽くす。

何故総悟はあんなに切なそうな顔をしていたのか…。

長いゆきの髪からまた一つポタリと雫が落ちて、廊下を濡らした。







4週間が経った。

そろそろ、平賀源外が帰ってくる頃ではないだろうか。
オレは毎日何度も携帯のディスプレイを確認するが、万事屋からの着信はない。
このオレが、まさかあの腐れ天パからの電話を心待ちにする日が来るとは思わなかった。


今日も朝の鍛錬の後シャワーを浴びて身支度をする。ブラジャーのホックを後手ですんなり留めれるようになった自分が悲しい。

朝食の為に食堂へと向かう途中、背後から呼び止められた。
振り返ると総悟が立っていた。

襲撃か⁉︎ と身構えるが、総悟はバズーカを出さずオレに近寄って来た。

「? 総…」

言い終わらないうちに総悟にぐいと腰を引き寄せられる。

「な…⁉︎」
「やっぱり」

総悟はオレの額に手を置き、はぁとため息を吐いた。

「土方さん、熱がありやす」
「え、熱⁉︎」

オレの手をぐいぐい引っ張り歩き出す総悟に、元来た廊下を戻るしかない。

「おい、ちょ…っ」

オレの部屋に着くと、総悟は押し入れから布団を出して敷いた。

「横になってくだせぇ」

有無を言わさないその態度に、オレはとりあえず大人しく布団に入る。

「朝の鍛錬の時からおかしいなとは思ってたんでさぁ。いつもより腕立ての回数少なかったし」

総悟はオレの文机の引き出しから体温計を出すとオレに渡してきた。なんでそこにあるって知ってんの?

熱は39度。
確かに今日はすごく身体が重かった気がする。腕立て伏せも20回しかできなかった。さっきも食堂へと向かってはいたが食欲は全くなかったし。

そうか。オレは熱があったのか。

「そういえば、昨日から喉が痛い。身体の関節も痛いな…」
「そりゃ風邪でさぁ」

呟いたオレに、総悟は呆れ気味に言う。

「風邪なんて滅多に引かないから、分からなかったんだよ!」
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