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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


見たい!触りたい!でもダメだ、ゆきの信頼に背いちまう!
頭の中で葛藤が渦巻く。
この下心をもしゆきに知られてしまったら幻滅されて嫌われることは必至だ。それだけはなんとしても避けたい。

…それでも、いずれは全裸で風呂に入らなければならない。身体も洗わないといけないし、トイレだって。
それらに対して邪な感情で行うか、そうでないかだ。
よし、ここは真選組副長土方十四郎の精神力、見せてやろうじゃねぇか。女の裸がなんだ。んなもん今まで散々見てきてる。邪な感情などオレの鋼鉄の理性でねじ伏せてやらぁ。

オレは心を勇み立たせて、バッと着物を脱ぎ始めた。






「………… 」

自分の精神力がこんなに脆いとは思わなかった。

濡れた髪からポタポタ落ちる雫をそのままに、肩を落としながら廊下を進む。
思い出しただけで顔がニヤけ…いやいや、赤面する。
当然だ。オレも健康な二十代男性なのだ。いや今は女の身体だが、しかし中身は1人の男なのだ。惚れてる女の裸を目の前にして、冷静でいられるわけがない。

猛省しながらも自分に言い訳をする。タオルの端でニヤける口元を隠しながら歩いていると、曲がり角で総悟と鉢合った。

「おや、土方さん、こんな時間に風呂ですかぃ?」
「そ、総悟…! あ、いや、ちょっと、汗、掻いちまったから…」

しまった。総悟に会うなんて。

しどろもどろに答えたオレに、総悟は片眉を上げた。

「1人ですかぃ?ゆきさんは?風呂に入れてもらったんじゃねぇんですかぃ?」

総悟が辺りを見渡して言う。

ギク。

「あ、その、…き、今日から1人で風呂に入れってゆきが…」
「へぇ〜…」

目線を合わせないオレを総悟は射抜くように見据えた。

ギク、ギク、、、。

バ、バレた⁉︎ ゆきの身体触りまくるためにこんな時間に入ってたのがバレた⁉︎

総悟にバレればゆきに告げ口するのは間違いない。
オレは次に来るであろう総悟の脅迫に、どう対処すべきかと焦る頭をフル回転させた。

しかし、総悟は黙ったままだ。

「?」

不審に思い総悟を見上げると、総悟は目を細めスッと右手を伸ばしてオレの頬を撫でた。

「⁉︎」

優しく触れるその手に、思わず一歩下がって逃れる。

「総悟…?」
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