第13章 No.13
「あー、オレ、副長とゆきさんが元に戻ったら、アタックしてみようかなー」
思いもよらない所からのライバル出現に焦る。
どこのどいつだ‼︎
隊士たちを確認しようと早足で角を曲がろうとした時、「おーい、見回り行くぞー」と声がかかり、話していた隊士たちは「おう」という返事と共に走り去った。
遠くに見える数人の隊士たち。後ろ姿では個人を特定できない。しかしゆきには十分気をつけるように注意しておかなければ。
オレのケツの命運も心配だし。
ようやく辿り着いた厨房。
「ゆきー。トイレー」
ひょいとドアから顔を出して言うと、ゆきはおばちゃん達と共にジャガイモを剥いていた。
おばちゃん達に囲まれてるエプロン姿のオレ。何度見てもシュールだ。
ゆきはすぐに「ハイハイ」と立ち上がると手を洗い、こちらに向かってきた。
そして2人で女子トイレに入る。
男女が連れ立ってトイレなんて、異様な光景だ。しかも、ゆきの姿のオレは目隠しされる。
「ゆき、どうやら隊士達の中におまえに邪な感情を抱いている奴らがいる。気をつけろよ」
お互い手を洗いながらオレが言うと、ゆきは意外にもアッサリ頷いた。
「はい。今朝も1人の方に告白されました」
「ブッ‼︎ な、何⁉︎ 誰だソイツは⁉︎」
オレは手を拭くのも忘れてゆきに詰め寄る。
しかしゆきは眉を顰めると、
「お教えできません。トシさん、その方に切腹申し付けるでしょ」
「当たり前だ‼︎ 気持ち悪い!」
ゆきはオレの手を丁寧にハンカチで拭いてくれた。
「大丈夫です。キチンと全部断ってますから」
「全部って何⁉︎ 何回告白されてんの⁉︎」
そんなにオレのケツを狙ってる野郎がいるのか!真選組、なんて恐ろしいところ…‼︎
「トシさんが美人だからですよ。私、人生でこんなにモテたことないですもん」
ゆきは拗ねたように言う。
男が美人て言われてもちっとも嬉しくないからね⁉︎
てか、オレとゆきは1か月程で元に戻るって、初めに隊士達に言っといたよな?
なのになんで告白という行動に出れるわけ?
元に戻った後、どうするつもりだったわけ?
意味分かんねーよ‼︎
「ゆき、ほんっと気をつけろよ!頼むから!」