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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


オレは自分の身体の介助を早くから放棄してゆきに丸投げしていたが、ゆきはやはり羞恥心が勝るのか、まだオレの風呂、着替え、トイレの世話をしてくれている。

この時間なら夕食の下ごしらえで厨房にいるはずだ。
食堂へと続く廊下を歩いていると、ひとつ先の角から複数の隊士たちの話し声が聞こえた。

「オレ、さっきゆきさんに『見回り頑張って下さいね』って言われちゃったよ」

ゆきの話題だと分かり思わず立ち止まる。ここを曲がると自販機コーナーだ。そこでダベっているのだろう。

オレに気付かず隊士達は話す。

「あ、オレなんて朝メシん時、『今日も大盛りでいいですか』って声かけられちゃった」
「いいなー。おまえら」
「ゆきさんてこの短期間で隊士1人1人みんな覚えてくれてるよな」
「そうそう、すげーよ。ほんですげーよく気が利くしさ」
「あぁ。初めは副長の顔でニッコリ笑われたら、恐ろしさしかなかったけど、今はあの笑顔が癒しに変わりつつある」
「わかるー!副長ってもともとすげー美形だから、ニッコリ笑ったらメチャ美人だろ?たまんねーよな」


「……」

オレはピキリとこめかみに青筋が立つのがわかった。
更に隊士達の話は続く。

「あの笑顔が見たくて最近ゆきさんに話し掛ける奴が増えてるよな」
「そうそう。顔が副長で中身がゆきさんてサイコー」
「オレ、メチャタイプ」
「おれもー。あー、一度でいいからヤらせてくんねーかなー」
「副長って肌キレイだし、あのケツ、プリンとしててかわいいよな」


「‼︎」

思わず尻を両手で隠す。

真選組は男所帯の為、やはり男色に走るヤツも出てくる。
自分が、少数派とはいえ隊士達にそういう目で見られていたとは!

背筋にゾワッと寒気が走った。

今まで無防備に隊士達と共に風呂に入っていたが、実は自分の尻がピンチだったという事に初めて気が付く。
オレが両腕の鳥肌をさすさす摩っていると、別の隊士が話し始めた。

「でもオレは本当のゆきさんの容姿も好みだな。守ってあげたいって感じだろ」

なんだと⁉︎
削がれていた怒りがムクリと起き上がる。

「そうだな。今は副長が入ってるからガラ悪いけど、副長との入れ替わりが元に戻って、あの性格であの容姿なら、メチャかわいいじゃん」
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