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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


男達はワイワイ騒ぎながら食糧庫からいくつかの大きな麻袋と樽を出すと、袋の中身を確認したり小分けにしたりそれぞれ作業をする。時折楽しそうな笑い声が響いてきた。そしてやがて手分けして持ち上げ運び出す。

ああそういえば、食糧庫から食材を運ぶ台車が壊れたって言ってたっけ。

隊士達の面子を見る限りおそらく、見廻りから帰ってきたところに、ゆきが一人で食材を運ぼうとしているところ出くわし手伝っている、といったところか。
しかしゆきを囲む隊士達の表情は明るく、決して嫌々手伝っている訳ではなさそうだ。時折聞こえる笑い声は楽しげに聞こえる。

オレは頬杖をつきながら、その様子を眺めた。

そういえばゆき、昨日は庭の草むしりを隊士達としていたな。ゆきの手作りプリンをかけて、誰が一番多く草をむしったかと大騒ぎしてたっけ。

一昨日は監察の潜入用衣装の縫製の手伝いをしていた。針仕事なんてしたことないオレの手で、スイスイと着物を縫っていたらしい。急ぎの衣装が仕上がったと山崎が嬉しそうに報告に来た。

通いの女中のおばちゃんが、ゆきが手伝っているお陰で定時に帰れるようになった、と喜んでいた。

この短い期間でゆきは自然と真選組に溶け込んでいた。一筋縄ではいかない隊士達がゆきにはよく懐いた。
常に浮かべる明るい笑顔の周囲には隊士達が自然と集まってきていた。

自分の身体の筈なのにゆきが入ってることで全くの別人のようだ。取り巻く雰囲気は柔らかく、暖かい。
修羅道に生きる男達には、血の匂いを感じさせないのゆき存在が癒しになっているのかもしれない。

隊士達とゆきの姿が見えなくなるまで、頬杖のままボンヤリと見送る。

「…女って、すげぇなぁ…」

青く澄みわたる秋空に、オレの呟きが吸い込まれて消えた。





2週間が経った。

ゆきの身体になってから、近藤さんの計らいにより見回りなどの外回りの仕事はせず内勤ばかりだ。
なので遂に今日は溜まっていた書類は全て片すことができた。

昼下がり、凝った肩をグルグル回しながら廊下を歩く。トイレに行くためにゆきを探しているのだ。
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