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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


「ゆきっ、大変だ‼︎ 血が、血が‼︎」

すぐに襖が開きオレの姿のゆきが入ってくる。オレはゆきに縋り付いた。自分の姿がこんなに頼もしく見えたのは初めてだ。

「ゆき!血が‼︎ 布団に‼︎ 幽霊が‼︎ ベッタリ付いて…!」

要領を得ないオレの説明に、ゆきは「幽霊?」と首を傾げながら布団とオレを見ると、ニッコリ笑った。

「大丈夫ですよ。幽霊じゃありません」
「…え?ほんとに?」
「はい」
「じゃあこの血は一体…?」

オレは下半身にベトリと貼り付く血を見た。
するとゆきは少し恥ずかしそうに「えっと、あの…」と口籠ってから、小さな声で言った。

「生理です…」

せいり? 整理?生理?せ、生理ー⁉︎

途端に顔に熱が集まる。多分真っ赤だ。
どんだけ女に免疫ないんだよ、とツッコむはずの総悟は今はいない。

「ごめんなさい、トシさん。ビックリしたでしょう? もうそろそろかなとは思ってたんですが…」

ゆきは申し訳なさそうに言いながら布団カバーを外していく。

「さ、一度シャワーを浴びてもらえますか?寝巻きも洗わなくちゃ」

そう言ってオレの手を引いて風呂場へと向かった。






女って大変だ。

オレは怠い腰をさすりながら筆を走らせる。

下腹部はズンズンと痛み、腰はジンジンとだるく、貧血気味で少しふらふらする。しかも気分は超ブルーだ。

集中できないため仕事が全く捗らない。

ナプキンなんて初めて見た。下着に付けたらゴワゴワするし、なんか引っ付いて気持ち悪いし…。これを頻繁に交換しなきゃならねぇなんて面倒臭えにも程がある。
月に一回コレが来るなんて耐えられねぇ。
しかも1週間続くときた。

「はぁ…。女ってすげぇなぁ…」

とうとう筆を置き机に突っ伏した。

しばらくボンヤリと目の前の硯と筆を見ながら現実逃避していたが、開け放した窓から外の賑やかな声が聞こえてふと頭を上げる。

窓から頭を出すと、屯所の裏手にある食糧庫の前で隊士達が数人いるのが見えた。水色のエプロンの男がいるところを見るとゆきがいるのだろう。

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