第13章 No.13
オレは自分の胸元を視線を下ろす。
ピンクのブラジャーに、柔らかそうな白い肌がふっくらと収まっていた。
「うぎゃ‼︎」
慌てて衿元を引き寄せ直す。
何やってんの、オレ!
もしかして、こんな状態でずっと屯所内歩いてたわけ⁉︎
オレですらちゃんと見た事ないゆきの柔肌を、その辺の隊士たちに見せてたわけ⁉︎
そりゃ全開ではなかったけども!明らかに谷間とブラは見えてたわけで…。
しょっぱなからに隊士たち全員に下着の色を知られてしまったオレは、その後仁王立ちのゆきに平謝りだった。
そして翌日からゆきは必ず安全ピンでオレの胸元を留めるようになったのだ。
一方ゆきの格好はというと、オレの着流しに水色のエプロン姿だ。
別に女中の仕事を手伝う必要はないのだが「トシさんからお給金をいただくのならお仕事させてください!」と自発的に働いてくれている。
しかし、庭の掃き掃除をするオレの姿や長い廊下の拭き掃除をするオレの姿は…、なんというか、鬼の副長の面目が丸潰れだ。
まぁ、ゆきの気持ちはありがたいし女中のおばちゃん達も喜んでいるので、ここは男らしく我慢する。
そして総悟の撮った写真だけは、なんとしても消去させる。
「おっと」
一瞬フラリとして横を歩く山崎にぶつかった。
「大丈夫ですか?」
「あぁ。すまねぇ」
なんだか今日はふらふらして熱っぽい。
心なしか、腹も痛い。
慣れないゆきの身体で無理したから疲れが出てんのか?ちょっとゆっくりと休むか。
そんな事を考えた翌朝。
下腹部の痛みで目が覚めた。
「う…。腹が痛い…?なんで…」
下痢の痛みではない。
とりあえず水を飲もうと起き上がるが下半身の違和感に気付く。
なんか、濡れてる?
ガバリと肌掛け布団を捲り、思わず悲鳴をあげた。
「ひぃ⁉︎」
下半身から敷布団にかけて、血がベットリと付いていたのだ。
慌てて全身チェックするが怪我はしていない。
「な?なんで?血⁉︎」
自分が寝ている間に布団の中に血まみれの亡霊でも出てきていたというのだろうか⁉︎
ホラーな展開を妄想して気が動転してると、物音に起きたのかゆきが隣部屋から声をかけてきた。
「トシさん?どうかしましたか?」