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十四郎の恋愛白書 1

第13章 No.13


あれから1週間経った。

定食屋の方は万事屋がキチンと働いてくれているらしい。ゆきが嬉しそうに言っていた。

オレ達は相変わらず入れ替わったままだが、お互いの身体にずいぶん慣れた。



「はぁ、はぁっ」

ポタポタと汗が床に滴り落ちる。
オレは今、道場で腕立て伏せ中だ。
やっと30回できるようになった。
プルプル震える腕。ゆき、どんだけ運動不足だったんだよ。

毎日の朝の鍛錬に、オレとゆきも参加している。
ゆきは近藤さんの指導で素振りに励んでいた。

「よし、ゆきちゃん、だいぶ良くなったよ!その調子であと50回!」
「はい!」

元来真面目なゆきだ。オレの身体の筋力を落としてはならないと分かった時から、意欲的に稽古に励んでいた。

そして、ゆきが朝練に参加するようになってから、総悟もサボることなく出てくるようになった。ゆきが素振りする近くで隊士たちに稽古を付けて、ゆきに‘デキる一番隊隊長’をアピールしている。

隊士たちもオレ達の入れ替わり状態に慣れつつあり、にこやかなオレの姿を見ても、誰も動じなくなっていた。





朝練の後シャワーを浴び、ゆきと共に朝食へと向かう。

オレはゆきが自宅から持ってきた着物ではなく、総悟が昔着ていた着流しを借りていた。
女物の着物では動きにくいからだが、女らしい動作などしないオレは、すぐに衿元が肌蹴てくる為、胸元を安全ピンで留めていた。

それはゆきと入れ替わった翌日のことだ。

「えっ、ゆきちゃん⁉︎」

廊下ですれ違った近藤さんが真っ赤な顔でオレから目を逸らして立ち去った。
「? 」

ゆき? いやいや、土方ですが。

それからも行く先々で隊士たちは頬を染めてオレをガン見だ。

なんだ?いくら男所帯で女が珍しいとはいえ、振り返って二度見することはないんじゃないか?

不思議に思いながらも、資料を取りに廊下を進んでいると、総悟が前から歩いて来た。

「おや、土方さん、えらくサービスいいんですねぃ」
「は?なんのことだ?」

首を傾げると、総悟は自分の胸元を差しながら「ピンクですかぃ。ゆきさんらしいでさぁ」とか言いながら横を通り過ぎて行った。

ピンク?
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