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十四郎の恋愛白書 1

第1章 No. 1


それからオレは、ほぼ毎日定食屋に通った。
ゆきのマヨネーズに完全に魅せられてしまったのだ。朝、晩の屯所でのメシが、味気なく感じるほどに。

「はい、どうぞ」

白い小さな手でコトンと置かれたゆき作の土方スペシャル。いつもの様に輝くマヨネーズが山を作っていた。

「おぅ、サンキュ。いただきます」

手を合わせてから丼を持ち上げ、一気にズゾゾとマヨネーズを啜り上げる。

「ふふ、ちゃんと噛まなきゃダメですよ」

ゆきはニコニコとこちらを見る。

「おまえはオレのお母さんか」

オレがツッコむと、目をパチクリさせて、

「十四郎、30回噛んでから飲み込みなさい。いつも言ってるでしょ」

なんて人差し指を立てながらノッてきた。

「うるせーな、母ちゃん」

オレもふざけて返す。

「あら、この子は。ほんとにもう!」

そして二人で笑い合う。

穏やかな時間が流れた。



ゆきはオレの土方スペシャルに対して一切引かなかった。
今までオレの食事風景を見て目を逸らさなかったヤツはいないのに、小雪はむしろ土方スペシャルを掻き込むオレを嬉しそうに見ているのだ。
そしてオレのマヨネーズ談義にも、仕事の合間にではあるがキチンと耳を傾けてくれる。

初めての理解者が出来たことにオレは浮かれていた。
ゆきにとっては常連客とのコミュニケーションを取っているに過ぎないのはわかっていたが、彼女がニコニコと笑ってオレの話を聞いてくれるのが嬉しかった。
いつも無口なオレが、彼女の前だと饒舌になった。


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