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十四郎の恋愛白書 1

第1章 No. 1


「あれ? 土方さん、また定食屋ですかィ?」

今日も昼飯を食わずに屯所を出ようとしたところを、通りがかった総悟に呼び止められた。

「あぁ。手作りマヨネーズがメチャクチャ美味い店でな。最近ハマってるんだ」
「へぇ、手作りねぇ。どこの店ですかィ。ちょっと行って、薬を仕込んでもらうように依頼を…」
「それなんの薬ぃ⁉︎ 絶対毒薬だよね⁉︎」
「心配しなくても、店には栄養剤だって言って、混ぜてもらいやすから」
「アホか‼︎ 心配するわ‼︎ あいつを殺人犯にするつもりか‼︎」

怒鳴ったオレに、総悟の眉がピクリとした。

「…あいつ…? 女ですかィ?」

低く響いた総悟の声がオレを突き刺す。

「…あ、いや…、ただの従業員の女だ。 マヨネーズ作りがメチャうめぇんだ。ただ、それだけだ」

なんとなく気不味くて言い訳じみた言い方になってしまったオレに、総悟は「へぇ…」とだけ答え、スタスタと去って行った。

総悟の姿が玄関に消えてから、オレは幾分か重くなった足を再び動かし始める。

なぜ総悟に後ろめたさを感じるのか、それはきっと、総悟の瞳がミツバに似てるから。総悟の瞳が、ミツバのことを忘れるなと訴えてるからだ。

でもあいつは、ゆきは、そんなんじゃねぇ。
ゆきは、神のマヨネーズを作れる天才で、マヨラーの理解者で、オレの話を上手く聞いてくれる店員で…。

ただ、ただそれだけだ…。



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