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十四郎の恋愛白書 1

第12章 No.12


食堂のドアから覗くと、厨房にゆきがいるのが見えたのだ。

瞬間、オレはダッシュしてゆきを捕まえた。

「な、な、何してんのぉ〜‼︎」
「あ、トシさん、朝の鍛錬お疲れ様です」

ニコリと笑ったゆきは、白い割烹着に三角巾をつけていた。

「お疲れ様、じゃねー‼︎ ゆき‼︎ オレの姿で、なんつー格好してんだ‼︎」
「え? 朝食のお手伝いをしようかと思いまして…。トシさんの隊服が汚れては大変だと思って、割烹着をお借りしたのですが…。駄目でしたか?」

焦るオレにゆきはキョトンと答える。

「さっき総悟くんが来て、すごくよく似合ってるって写真撮ってくれたので、大丈夫だと思ったのですが…」

総悟の野郎‼︎ 後でデータ没収しねぇと!

「ごめんなさい」

がくりと項垂れるオレに、ゆきは申し訳なさそうに謝る。
そう、ゆきに悪気は無いんだ。

「とにかく、厨房を手伝ってもいいが、割烹着と三角巾はやめてくれ」

頭から三角巾を外してやりながら言うと、ゆきは小さくなって「ハイ」と答えた。



だかしかし、朝からゆきの手作りマヨネーズ(出来立て)を食べれるなんて幸せだ!

オレはうきうきとトレーを持って列に並んだ。

周りの野郎共が物珍しそうにオレを見てくる。しかもゆきは小柄で野郎共はデカい。
…邪魔だ…。
まるで周りを黒い壁で囲まれたような錯覚を覚えた。

一方、ゆきは厨房で水色のエプロンを付けておばちゃん達の手伝いをしていた。流石に普段定食屋で働いてるだけあって、朝の厨房の即戦力になったようだ。

それにしてもこのオレがエプロン姿を隊士達に晒すことになろうとは…!
屈辱的だが、おばちゃん達と共にイキイキと動き回るゆきを見ると何も言えない。さっき厨房を手伝ってもいいって言っちまったし。

「はい、トシさん、マヨネーズ」

トン、とトレーに置かれる器。
え?これだけ?

「ちょ、ゆき、少なくね?」
「少なくなんてありません。トシさんは今私の身体なんだから、それでも多いくらいです」

普段、大きめのタッパーになみなみと入っているマヨネーズが、今日は小鉢に軽く山を作る程度だ。
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