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十四郎の恋愛白書 1

第11章 No.11


そう言って、万事屋の手がオレの着物の裾に伸び、ゆっくりと捲り上げていく。
オレも固唾を飲んでそれを見ていた。




ゴン! ゴン!

「いだっ!」
「あだっ!」

唐突に頭に強い衝撃が落ちてきた。

涙目で頭を摩りながら見ると、オレの姿をしたゆきが阿修羅の如く立っていた。

「何、してるんですかぁ…?」

地を這うようなゆきの声。

「ひっ、ゆきっ!」
「ち、違うんだ! これは、そのっ」

オレたちは蒼白になり慌てて弁解しようとするが、時既に遅し。

「「うぎゃ!」」

オレと万事屋は胸倉を掴まれ吊るし上げられる。
ゆきの周囲に浮かぶ陽炎。なにやら後ろに見える修羅の姿は幻なのか。

「問答無用です‼︎‼︎」
「「ひぃ‼︎」」

オレは自分が“鬼の副長”と呼ばれる訳が分かった気がした。
怒ったオレ(ゆき)、怖すぎ…。




ゆきは眠るおばちゃんの横で看病していた。
時折おばちゃんの額の手ぬぐいを取ると冷水に浸し、ギュッと絞ってからまたそっと乗せる。

「ゆきちゃん…」

 掠れたおばちゃんの声がした。どうやら気が付いたようだ。

「女将さん!大丈夫ですか⁉︎」

起き上がるおばちゃんの背をゆきが慌てて支える。
そんなゆきにおばちゃんは「はぁ、」と疲れたように息を吐くと眉を下げた。

「本当に土方さんじゃなくて、小雪ちゃんなんだねぇ」
「はい、ごめんなさい」

申し訳なさそうに答えたゆきの頭をおばちゃんはさらりと撫でる。そしてふとこちらを見た。

「あら、あんた達はなんでそんなにボロボロなんだい?」

部屋の隅で正座するのはオレと万事屋だ。先程ゆきにシメられたのでヨレヨレだ。

「「いや、オレ達のことは気にしないでください」」

2人で小さく答えた。

おばちゃんはゆきに向き直ると、「土方さんを撫でてるみたいで、なんだか変な感じだねえ」と、またゆきの頭を撫でた。

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