第11章 No.11
「な、なんだと⁉︎」
「えぇ⁉︎」
オレとゆきは愕然とした。
一カ月だと⁉︎この数時間でももう限界なのに、そんな長期間このままでいられるか‼︎
オレは万事屋の胸倉を掴むと、ガクガク揺さぶった。
「おい、万事屋!なんとかしろ!」
「ちょ、ゆきちゃん、やめて!」
「ゆきじゃねえ!土方だ!」
「あ、そっか」
万事屋は中身がオレだと認識した途端、バッとオレの手を払い除けた。
「多串くん、いくらオレでも源外のじいさんの機械をいじることはできねぇ」
襟元を正しながら万事屋が言う。
そして縋るような目で万事屋を見るゆきに向きなおった。
「ゆき、あのじいさんの作るカラクリは、時にとんでもねぇもんがある。もし素人が下手に触ったら、もっと大変なことになり兼ねねぇ」
「そう、なんですか…」
項垂れるゆき。万事屋はそんなゆきの頭を撫でながら言った。
「じいさんが帰ってきたら、すぐに知らせてやるから。それまで辛抱して待ってな」
「ひぃ!」運転席の山崎が悲鳴をあげる。
オレは思わず万事屋のケツを蹴り上げた。
「やめろ、バカ!絵面が気持ち悪いんだよ!」
万事屋がオレの頭を撫でるなんて、鳥肌もんだ。
しかし万事屋自身もショックを受けていた。
「い、今、多串くんがゆきに見えた…。オレが多串くんの頭を撫でるなんて…!」
頭を抱える万事屋のケツをもう一度蹴飛ばしてやる。
「いだっ!」
「トシさん!」
大袈裟に痛がる万事屋を見てゆきが嗜めてきたが、プイとそっぽを向いてやった。
ゆきの力の蹴りが痛い訳ねーだろ。
「とにかく万事屋、平賀源外が帰ってきたらすぐに知らせろ。ゆきはそれまで屯所にいる」
「え?私、屯所でお世話になるんですか?」
ゆきが驚いてオレを見る。
「あぁ、姿はオレだからな。いつ攘夷志士に襲われるかわからねぇ。いくらオレの身体でも、おまえじゃ刀振り回せねぇだろ。屯所にいた方が安全だ」
「はあ…。でも…」
「どうした?」
ゆきは乗り気ではないようだ。しかしトイレ1つでもお互いの介助が必要なのだ。離れて生活なんてできない。
やがてゆきは言いにくそうに口を開く。