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十四郎の恋愛白書 1

第9章 No.9


「はい。13才の妹と10才の弟がいるようです。妹が母親の看病と家事をし、弟は新聞配達をしながら寺子屋に通ってるみたいですね」
「 …… 」

家族のことは聞いたことがなかった。
オレに他人に話すような家族がいないこともあり、そういう話題はオレからは振らなかった。ゆきもそうなのかもしれないと、勝手に思っていた。

黙るオレに、山崎はパタンと手帳を閉じる。

「ゆきさん、可愛くて気立てが良いと近所や店のお客さんからの評判はすこぶるいいです。特に店のお客さんは彼女目当ての常連が増えたようですよ」

ピキッとこめかみに青筋が浮かぶと同時に、オレはタバコの箱を握り潰した。数本残っていた中身が一緒にぐしゃりと潰れる。

しかし山崎は首をかしげる。

「オレが見た感じ、『優しそうだけど地味な女性』っていう印象だったんですが…」

うるせー。テメェにゆき良さが分かってたまるか!このジミーが‼︎

口は禍の元という言葉を知らない山崎は更に言う。

「どこにでもいそうな感じなんですけどねぇ。特別美人てわけでもないし」
「あぁ⁉︎」

オレが遂にキレて睨むと山崎は即座に「嘘です!」と否定したが、グーで一発殴っておいた。

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