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十四郎の恋愛白書 1

第9章 No.9


「副長、定食屋の看板娘さんと、うまくいってないんですか?」

山崎の急な問いに、思わず咥えていたタバコをブッと吹き出してしまった。火を付ける前で良かった。

「や、や、山崎!なんでそれを!」
「オレ、監察ですよ」

得意気に胸を張る山崎。

普段なかなか情報掴んで来ねー癖に、こんなところで監察力発揮してんじゃねーよ!

「副長が意味もなく他人の色恋に足を突っ込むとは思えません。オレに、定食屋の看板娘さんのことを話そうと思っていたんじゃないですか?」

珍しく鋭い山崎に図星を突かれたオレは、またタバコに火をつけて、せわしなくスパスパした。

山崎はしばらく顎に手を当て考えいたが、やがて口を開いた。

「最近、沖田隊長は毎日定食屋に通ってゆきさんにアピールしているみたいですね。恋敵ってやつですか」

「 ‼︎ 」

驚いて山崎を見るが、山崎はそのまま続ける。

「万事屋の旦那もゆきさんを狙ってるみたいですし、4角関係ってやつですね。ややこしいですね」

ちょっと待って!
ほんとおまえ、どこからそんな情報仕入れてくんの⁉︎
なんでその力量を普段の仕事に使わないの⁉︎

唖然とするオレ。
しかし山崎は止まらない。

「ゆきさんは、沖田隊長と随分親しくなっているようですよ。呼び方が、『総悟くん』に変わっています」

もしかしておまえがゆきのストーカーだったんじゃねぇの⁉︎

「これは一番隊の神山からの情報です」

山崎はさらりと言うと、「次に新八くん情報ですが…」と続けた。

「万事屋の旦那は、副長と一緒に定食屋を出禁になっていましたが、4日後からまた通い出したようです。沖田隊長が閉店間際に行くのに対し、万事屋の旦那は開店前に行っているようです」

開いた口が塞がらないとはこのことだ。
スラスラと話す山崎。いつもの地味さは影を潜め、なんてスマートな仕事をするんだ!
おまえ本当に山崎?

更に山崎は止まらない。

「新八くんが言うには、いつも10時半に万事屋を出発して定食屋に向かうとのこと。万事屋の旦那は料理上手ですからね。開店直前に行って、店の仕込みなどを無償で手伝うこともあるようです。それによって、最近では『銀さん』と親しげな呼び方に変わりました」

そこまで言うと山崎は、ググッとオレに顔を近づけた。

「 ⁉︎ 」

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