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十四郎の恋愛白書 1

第7章 No. 7


それからも二人は、あの映画が良かったとか、この映画はB級だったとか、映画話で盛り上がっていたが、結局、口下手なオレが二人の会話に入る隙はなく、タバコを吸い終わると、財布を出して立ち上がった。
ゆきがすぐに立ち上がり、会計場へ向かう。

「ごっそうさん」
「はい、ありがとうございました」

やっとゆきの視線がオレに向いたことが嬉しい。

「総悟、あまりゆきを連れ回すなよ」

総悟をギロリと睨んでクギを刺すが、総悟はしれっと

「オレは土方さんと違って、女性のエスコートの仕方を知ってるから大丈夫でさぁ」

などと憎まれ口を叩いてきた。

「ドSのおまえに言われたかねーよ!」

ったく!すぐに女に首輪を付けたがるくせに!

「とにかくゆき、あまり遅くならないうちに帰るんだぞ」
「お父さんか」

総悟のツッコミは無視して、オレは今もらったレシートの裏に、懐から出したポールペンでさらさらと数字を書いた。

「ほら、これ、おれの携帯番号。何かあったらすぐにかけてこい。駆け付けるから」
「え、でも、私携帯持ってないし…」

ゆきは携帯電話を持っていない。それは前に聞いた。
しかし、必要となれば、公衆電話や店の電話などから掛けれるだろう。

オレはメモを戸惑うゆきに押し付けると、「じゃあな」と言って暖簾をくぐって店を出た。


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